【vol.48】クリ・クルミの保存食

なんとな~く秋がやってきた。台風の影響か? 寒くなるのかと思ったら暑くなったり、今年は春から変な気象が続いた。この〝なんとな~く〟で自然界の生き物たちは左右され、少なかったり多かったりと発生や成長に狂いが生じる。虫などの大発生や木の実の不良がその影響だったりする。毎年秋には、木の実を収穫し季節を味わうのだが、今年はなんだか実のつきが悪いので、散歩して見かけたら収穫することを繰り返すことにした。

千葉県に大きなダメージを与えた台風15号。東京のオンボロ我が家の屋根を壊し、こんにゃろ~と思っていたのだが、その後の散歩ドライブでいいこともあった。車で林道を走らせていると、道端に栗のイガがたくさん落ちている。本来ならまだ木に生っているはずなのだが、台風で落とされたヤマグリだ。栗の木を探す手間がはぶけるのと、実が新しいのとでこれは拾わないと損だ。イガを目印に次から次へと車を走らせ拾い集める。楽々栗拾いだ。おおよそ拾うドングリやクリには虫が入っていて(クリシギゾウムシの幼虫)食い物にならない。それを覚悟でたくさん拾う。ヤマグリは小粒で食べるのに面倒だが、味は最高! 甘く色々と利用できる。

拾っていて気がついたのだが、何か動物のかじった後のような壊れた栗がやたらと多い。これはライバル出現か? 拾い集めて実をじっくり見て想像したら、おそらくイノシシではないかと思った。猿はここにはいないし、タヌキやアナグマでもなさそうだ。結構雑に食べている。口に放り込んで奥歯でくちゃくちゃして殻を出す感じだろうと想像した。以前夜、車を走らせていた時に、イノシシ何頭かに遭遇し、逃げなかったので車の中から見ていると、栗イガに鼻を押し付け実を口でつかむとクチャクチャ噛んで殻を出す光景を見たことがある。鼻にイガが刺さっているのに全く気にせず食べていたのが印象深かった。

今回のドライブで川沿いの農道では、オニグルミも見つかった。オニグルミは外側の果肉部分が緑色のものはまだ固く、すぐには使えない。アクが強く、タネを取り出すのに手間がかかるからだ。緑色のものは、持ち帰り、ざるなどに入れ外に放置してその時を待つ。黒くボロボロになっているものを中心に拾いあつめる。クルミはそのままでも保存がきくのだが、今回はついでだったので少し加工して簡単保存食を作ることにした。

秋の木の実は、地域や場所で様々で、キノコも含めると色々と楽しめる。旬や収穫時期を知っていれば、順番を考えて秋の収穫祭が楽しめるものだ。しかし、今年のような気象だとせっかく考えていた順番も思うように楽しめず、諦めなければならなかったりもする。自然は、そんなところも含め楽しむものなのだ。

私はいやしいので、欲しい実が収穫できないと北上したり南下したり桜前線ではないが、成長に合わせて地域を移動して探したりもする。採れないとものすごくショックだけど、フィールドに出て色々見るだけでも楽しいので、少しずついろんなものに触れて知って楽しんでいる。

今回のオニグルミやヤマグリまたは、ギンナンなどは、郊外の里山に少し車を走らせれば意外と簡単に見つかる。好奇心からでもいいので自分で採って食べてみよう。そこから、工夫をして新しい世界を作ってほしい。

クリ・クルミの保存食

秋の木の実は秋のうちに採らないとあっという間に無くなったり、食べられなくなったりする。採集時っていうものがあるのだ。加工することで保存食にもなるので時間があれば是非試してほしい。また美味しい食べ方を研究してみてほしい。

完成した栗のペーストとクルミ味噌。美味しくできると数日で無くなるので、大量に作って瓶に詰め保存する。

右がヤマグリで左がオニグルミ。里山の林道を車で走ると、雑木山にはヤマグリやオニグルミの木が意外と多く見つかる。ドライブついでに路上に落ちた木の実を拾いながら進む。拾いやすいのがポイント。採集は楽しいのだ。

拾う栗の大半に虫が入っていることを考え、できるだけたくさん拾う。小さいが味が濃く美味しい。

むむっ、誰かが食べた跡! しかも雑。俺より先に! いったい誰だ!この食べ方はイノシシに違いない。

オニグルミは川沿いに生える。実は黒く果肉が腐っているものを選ぶ。余裕があれば緑の実も採る。

拾った実は川で腐った果肉を洗い取り、実だけにする。アクが強いので素手でやると黒く色がつく。

クリ

 

1.まずはざっと流水で洗う。中の実を食べるのでそんなに気を使わなくてもいいのだが、気分的に洗う。

2.水を止め浮いているものは虫が入っているので取り除く。今回の栗は優秀で虫が少なかった。

3.栗が弾けないように実に包丁で切れ目を入れる。切れ目を入れたらオーブンレンジで200度で30分焼く。

4.焼いたクリを半分に包丁で切り、中の実をスプーンで掻き取る。単純作業なので音楽でも聴きながら進める。

5.掻き出した実の2分の1の量の砂糖とほぼ同量の水を用意する。甘くするには砂糖の量を増やす。

6.材料を全て入れて鍋にかける。途中味を見て水分が無くなりとろとろになったら完成。濃厚なクリジャムだ。

完成!

クルミ

 

1.まずは採ってきたクルミをざっと洗う。本当なら分量があるのかもしれないがいつも目分量なので適当。

2.クルミを金槌などで割る。実の尖った方を上にして少し斜めに傾け、左右合わさったところを叩くと割れやすい。

3.割ったクルミの実を楊枝や尖った物でほじくり出す。若い実は綺麗に取りにくいので丁寧に出す。

4.取り出した実を袋に入れ硬いもので砕く。ある程度食感を残すなら細かく叩きすぎないように。砕いたらフライパンで5分中火で炒める。

5.味噌、砂糖、みりんを用意。味噌はクルミのほぼ倍。砂糖とみりんの量は好みだが甘い方が美味しい。

6.炒めたクルミに調味料を全て入れて、水分がなくなるまで混ぜながら炒める。焦がさないように弱火で進め完成。

完成!

クルミ味噌は味噌にもよるが甘めに作って正解だった。栗のペーストは甘さを抑えたので、栗かのこのような感じでめちゃくちゃ上手にできた。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。