【vol.48】第16回 伝統保存食入門

ピーナッツチャンク

生のピーナッツ(落花生)が手に入るこの時期に作ってみて欲しいのが、ピーナッツバター、もしくはピーナッツチャンクだ。え~! あんな甘い子供の食べ物を? なんて、思わないでいただきたい。激甘なのは市販品だからなのである。自分で作れば、そんな既成概念がふっ飛んでいく。

甘さも粗さもお好み次第

ピーナッツというと、ミックスナッツや柿の種に入っている既にローストされているものを想像しがちだが、本来は生である。生のピーナッツの塩茹では、なかなか美味い酒の肴だ。

ピーナッツバターやピーナッツチャンクはアメリカンイメージが非常に強い。それも「洗練されていない」ジャンクフード的なイメージの方で。何しろ甘さが強すぎるのだ。でもそれは前回のトマトケチャップ同様に自作すれば全く問題ない話であり、市販品で満足できなければ作ってしまえ、という考え方は本誌読者ならわかっていただけると思う。

バターとチャンクの差は滑らかさの違いで、粒が入ってザラッとしている方がチャンク。舌触りが楽しいので僕はこちらの方が好きだ。甘さを抑えめにして作ったピーナッツチャンクは様々な料理に使うことができる。僕は味噌や豆腐と合わせて白和えにしたりするのが好きだ。サラダ用のドレッシングに混ぜたり、カレーの味に深みを出すのにもいい。

アメリカ人はピーナツバターが大好きで、レシピブックも売っている。でも、最後に書いてある一番美味しい食べ方は「ピーナッツバターのビンの中に指を突っ込み、その指を舐める」というもの。バカバカしくて笑ってしまう。

【材料】生ピーナッツ(落花生)殻を外した状態のもの:500g、砂糖:大さじ1~3、バター:10g、もしくはグレープシードオイルまたはサラダオイル:大さじ1

【作り方】
1.生ピーナッツの殻を剥く。ローストしてあるものよりも殻は剥きづらい。殻を割るのにプライヤーなどを使ってもいいが、勢い余って中の身まで潰してしまわないよう注意。
2.茶色い甘皮を剥く人もいるけれど、僕は多少苦味や雑味を残したいので甘皮を残したままにしてある。
3.フライパンで焦げないようにトロ火で乾煎りする。焦がすとその匂いがそのまま残ってしまうので注意。ミディアムローストならほのかな苦味の残った生の感じ(意外性があってこれも美味い)、ハイローストならば甘みと香りの強い、いわゆる市販品のピーナッツバターに近い感じになる。
4.すり鉢に入れて気長にすりつぶす。フードプロセッサー(ブレンダーやミルサーなども含む)を使ってもいいが、使うならばハイパワーのものが必要。ピーナッツバターやピーナッツチャンクは粘性が非常に高いので電動調理器具はモーターを傷めやすい。かくいう僕も、一度にたくさん作ろうとして、ブレンダーのモーターを焼きつかせてしまったことがある。
5.砂糖、オイルを少しづつ加えながら半分は滑らかになるまですり潰す。
6.煮沸消毒した密閉ビンに入れて保管する。

落花生の生産は岩手から沖縄までで行なっているが、ダントツなのは千葉県。台風15号の影響が心配だ。店頭で見かけたら是非購入して応援したい。すりつぶしてしまうので粒の大きさは気にしなくていい。

フライパンで乾煎りする。ローストの加減で仕上がりの風味が随分異なる。僕は半ナマのものとハイローストのものの2種類を作って違いを楽しんでいる。

すり鉢で気長にすりつぶしてペースト状にしていく。ブレンダーやミルサーを使うならばハイパワーのものが必要。手動の方が目の粗さを自由に調整できる。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。