ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。
今回の酷道
有料道路の先にある
災害と魅力の多い酷道
石川県小松市〜富山県富山市
国道360号は、富山市から石川県小松市に至る一般国道だ。起点・終点ともに日本海側の都市だが、途中なぜか岐阜県の白川郷を経由するため、そのほとんどが激しい山間部となっている。
私は終点である石川県小松市から国道360号に入った。酷道区間を走るだけなら、岐阜県の白川郷付近から入ればいいのだが、酷くない区間もなるべく走っておきたい。酷道趣味というのは、国道という最高レベルの道路でありながら、状態が酷いというギャップ萌えの要素が大きい。酷い道だけではなく良い道も知っておくと、ギャップをより楽しめるからだ。
道の駅一向一揆の里を過ぎ、天下の酷道157号との重複区間を経て、いよいよ山深くなってきた。しかし、ここで国道360号は一旦途切れてしまう。石川と岐阜の県境は不通区間になっており、有料林道・白山白川郷ホワイトロードによって接続されている。こんな山奥でお金を取られるのも癪だが、普通車の通行料1600円を支払って先に向かう。標高1450mからの眺めは最高だが、全線2車線あるため、結局1枚も写真を撮っていなかった。
石川県から岐阜県に入ると国道360号に復帰し、合掌集落で知られる白川郷に近づいてきた。この付近は駐車場に入る車で慢性的に大渋滞している。巻き込まれないように慎重に回避し、いよいよ酷道区間へと入ってゆく。
天生峠の入口にはゲートがあり、例年11月から6月までは冬季閉鎖となる。その他の期間でも自然災害が発生すれば通行止となる。結構な頻度で土砂崩れ等が発生し、1年間で通行できるのは、実質数か月間しかない。実は1ヶ月前にもここに来ていたのだが、ゲートが閉じていたため通行できず、今日はそのリベンジだった。
酷道区間は、車1台分には多少余裕がある道幅だが、対向車との離合は難しい。深いカーブが連続し、標高を稼いでゆく。天生の中滝という立派な滝を眺めながら、楽しい酷道ドライブが続く。
天生峠に到達したが、オブジェも何もないので通過。峠を過ぎると、道幅が車1台分ギリギリになってきた。また、災害によって道路が損壊し、それを補修したばかりの箇所が散見される。緊張感に比例して、私のテンションも上がる。
ヘアピンを繰り返しながら山を下りると、JR高山本線と宮川に沿って穏やかな酷道区間が続く。ここから富山にかけての区間は、改良工事が以前から進められていて、既に大部分が完成している。バイパスが完成すると、従来の酷道は国道指定を外され、我々の趣味の範疇ではなくなってしまう。しかし、この付近の廃道になってしまった旧道には、国道だった時代の痕跡が色濃く残っている。そうした痕跡を探すための旧酷道探索も面白い。国道360号は、絶景の有料道路あり、酷道あり、旧道ありと、多くの魅力が詰まった国道だった。
ヘアピン、そして急勾配・これぞ酷道。
岐阜〜富山の県境付近には、国道の名残りが感じられる香ばしい旧道が存在する。
鹿取茂雄
酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/