【vol.47】第15回 伝統保存食入門

大人のケチャップ

ケチャップは子供の調味料、そう思っている人も多いのではないだろうか。僕もケチャップは好きだが、確かに市販のケチャップはかなり甘いと感じるし、食べ飽きる味と言えなくもない。ならば、自分好みのものを作ればいいのである。旬の完熟トマトで作る大人のケチャップだ。

スパイスを効かせた大人の味

夏野菜の代表ともいえるトマト。家庭菜園やプランターで作ったことのある人ならば分かると思うが、なる時は一気になる。食べきれないくらいにできる。そこでオススメしたいのがケチャップ作りだ。このように一気にたくさん取れて仕方のないものを、ない季節のために加工するというのが、保存食作りの本来の姿ともいえる。

また、「ケチャップはどうも甘くてなあ」と思っている人にもオススメだ。実は市販のケチャップにはかなりの量の砂糖が入っている。自分で作れば、サッパリかつスパイシーに仕上げるのも簡単だ。オムレツやスクランブルエッグにかけて食べてみてほしい。ナポリタンスパゲッティのようにケチャップ主体の料理に使うと、子供の調味料だと思っていたケチャップの認識が変わるハズだ。

「トマトが赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあるけれど、同様に「リンゴが赤くなれば~」「柿が赤くなれば~」ということわざもある。ともかく、旬のものをきちんと食べていれば健康を維持できるということだ。トマトでもイチゴでも1年中手に入るようになってしまった現代では、食材の旬がいつかなど知らない人も多いのだろうが、野菜の旬、魚の旬くらいはできれば覚えておきたい。それには実際に自分で作ってみたり、釣りに行ってみたりするのが一番いい。

【材料】完熟トマト1kg、タマネギ1/4、ニンニク1かけ、酢100cc、砂糖大さじ2、塩小さじ1、ローレル2枚、クローブホール8個、プロバンスハーブミックス大さじ1、タカノツメ1本(種抜き)、シナモン1本

【作り方】
1.完熟トマト、タマネギは乱切りにする。
2.ニンニクはすりおろすか、スライスする。
3.トマト、タマネギ、ニンニクをミキサーにかけてジュース状にする。
4.③を目の細かいザルで裏ごししてトマトの皮と種をより分ける。トマトを湯むきする人もいるが、僕はザルで濾すので湯むきはしない。
5.酢にスパイス類を全て入れ、弱火から中火で4~5分煮てから冷まし、ザルで濾してスパイス類をより分ける。
6.裏ごしの済んだトマトを弱火~中火で熱し、全体量が2/3くらいになるまで煮詰める。
7.⑤、砂糖、塩を加えてさらに煮詰め、全体量が最初の半分くらいになるまで煮詰めていく。
8.1kgのトマトを煮詰めて半分にするから使う保存瓶の容量は1瓶ならば500cc程度のもの。きちんと煮沸消毒をしておくこと。
9.出来上がったケチャップを保存瓶に入れて、湯煎で減圧密封して完成。開封したら早めに使い切ること。
10.甘いケチャップが好きな人は砂糖の量をもっと増やすといいし、もっとスパイシーなのが好きな人はチリパウダーなどを加えるのもいいだろう。今回はシンプルにトマトの味を主体にしたが、僕はセロリを加えて味を複雑にするのも好きだ。

使うのは生食では柔らかすぎるくらいになった完熟トマト。市販のトマトを使うなら買って常温で2、3日置いて追熟させてから使うといいだろう。とにかく、真っ赤に熟したトマトを使うことが肝心。

ミキサー(ブレンダー)にかけたトマトをザルで裏ごしして種と皮をより分ける。この時点では濃いピンク色をしているが煮詰めていくと真っ赤になっていく。

全体量が半分になるまで煮詰める。弱火から中火で、焦げ付かせないように鍋の底をさらうようにしてかき混ぜながら煮詰めていくのがポイント。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。