【vol.47】酷道339号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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車も自転車も通行不可能
日本で唯一の階段国道
青森県東津軽郡外ヶ浜町

国道339号は、石川さゆりさんの名曲「津軽海峡・冬景色」で知られる竜飛岬(竜飛崎)へと続いている。青森市街から国道280号で津軽半島東部を北上していたが、今別を過ぎたあたりで国道339号にバトンタッチした。センターラインが消えて道幅が少し狭くなり、徐々に“北のはずれ”らしくなってきた。

竜飛崎が近くなると、いきなりとんでもない酷道が姿を現す。国道339号が階段になっているのだ。車やバイク、自転車をも拒絶し、歩行者しか通ることが許されない。階段が国道に指定されていることは非常に珍しく、他に例がない。

近くの駐車場に車を停め、早速歩いてみる。丘の上から階段を下りるのだが、入口には見覚えのある三角形の国道標識が立っていた。階段は全部で362段あり、高低差は70メートル。下るだけならいいのだが、行ったら帰って来なければならない。ここまで夜通し走ってきたことと、現在の時刻が午前5時ということを考えると、この階段を上ることがとても憂鬱に思えてくる。

階段はしっかりと整備され、道の中央部には手すりが下まで続いている。訪問したのは8月だというのに、道の左右には紫陽花が美しい。さすが青森だ。ここの紫陽花はとても綺麗なので、8月の訪問をお勧めしたい。

見事な紫陽花を眺めながら階段を下っていくと、中腹にフラットな場所があった。ここにはかつて竜飛中学校があった。この道は、以前は階段ではなく坂道になっていたが、ここを子供たちが歩いて通学していたのかと思うと、感慨深い。

中学校跡から先は、漁港を見下ろすことができる。さらに階段を下ると、スタートから15分ほどで最下部に到達した。普通の人はここで折り返すのだが、私の目的はあくまでも酷道。階段が終わっても、まだ国道339号は続いている。国道は階段から路地となり、民家の間をすり抜け、クランクして大きな道へ出た。酷道区間はここまでとなるため、息を切らせながら車まで引き返した。

既にお気づきの方もいるかもしれないが、竜飛崎へのアクセス国道が、自動車で通行できないというのは非常に不便だ。そのため、階段区間を迂回する道路がきちんと整備されている。通常であれば、自動車が通行できる迂回路を国道に指定し、階段を国道指定から外すだのが、それをしなかった。それは、日本で唯一の階段国道が有名となり、観光地化していたからだ。青森県の貴重な観光資源をなくす訳にはいかないという理由で、階段が国道に指定され続けている。

色々と大人の事情が透けて見え、本来の酷道とは異なると感じる方がいるかもしれないが、私は観光のための酷道もアリだと思っている。これをきっかけに、観光に訪れた人が酷道に興味を持ってくれたら、素敵なことだと思うからだ。

その後、海の絶景を楽しみながら、国道339号を起点の弘前市までドライブし、岐阜へと帰っていった。

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半分を過ぎたあたりまで来ると視界が開け、港町の様子が見えるようになる。

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階段のあとは、路地が続く。かつては民家が密集していたが、近年の火事で大部分が焼失してしまった。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/