自身の手でフィールドを生きる サバイバルスキルの真髄
自然の中や自宅、ホームセンターにはもちろん、ゴミ箱の中にも素材はあるし、非常時に持ち出した食料や飲料の空き缶だって立派な素材になる。身の回りにある使えるものを徹底的に利用し尽くせば、快適なキャンプギアを作り出せるのだ。自然を生きる知恵に変えるための現代のブッシュクラフトで得た知識は、D.I.Y.キャンプにも応用できる。自分だけのオリジナルグッズでフィールドをより楽しもう!
写真・文/荒井裕介
02.D.I.Y. 『Pothook』
焚火をするなら 一つは欲しい優れもの
股のある枯れ枝やスポーク作りで残った生木の枝などで製作できるポットフックは、工作時間も短く現地でさっと作れるのが魅力。ブッシュクラフトの入門的な工作だ。マルチツールナイフ1本でも作れる。
枝とパラコードがあればポットやクッカーを吊るせる。安定感の悪いクッカーでも安心して使える補助装備だ。
Material
股のある枝
真っ直ぐな枝
パラコード
Tool
ノコギリ
ナイフ
リーマ
※これらを備えたマルチツールナイフでも可
Working Process
Step01
まずは切り出した素材の成形をする。二股の枝の片側を短く鋭利にし、フック状にする。長い方も適度な長さに切り落とす。またフックの下側(二股の付け根)もクッカーのフタなどと干渉しないようにカットし整える。
Step02
各切り口の面取りを行い、干渉する部分との当たりをスムーズにし、バリなどでの怪我を防止する。面取り作業は地味だが見た目も機能にも影響する部分なので、時間があるのであればぜひ行ってもらいたい。これは上級者なら必ず行う作業なので習慣づけるようにしよう。
Step03
パラコードを結ぶためのノッチを刻む。ノコギリで均一に一周切り込みを入れてもよいし、ナイフで切り込んでもよい。下側から上に向かってノッチを一周彫り込み、パラコードがクッカーの重さでズレないくらいまで彫る。些細な作業だが重要なので丁寧に。
Step04
続いて自在部分を作る。作ると言っても木を適度な長さに切り、パラコードを通す穴を2カ所あけるだけだ。マルチツールナイフのリーマーを使うとパラコードにはちょうどいいサイズになる。穴の間隔は2〜3cm。穴同士を離せば扱いやすい。それ以上広くても問題はない。
Step05
鉤部分から結び始めて自在棒の下側から通し、もう一方の穴に上から通して端を結び留める。パラコードは長めに取ると様々なシーンで使える。短くする場合は自在棒に巻きつけ留める。コブを利用するといい。
03.D.I.Y. 『Tripod Chair』
大きな座面付きで快適なリクライニングチェアー
今回は竹を使っているが細い木でも作れる。竹は生息地域が限定されるのでその時のフィールドで調達可能な素材を選んでほしい。座面の裁縫とトライポッドができれば誰でも作れる。これもビギナーから挑戦してもらえるはずだ。
Material
竹(真竹が扱いやすい)
帆布
藤の根
パラコード
Tool
ノコギリ
ナイフ
Working Process
Step01
焚火に使うトライポッドと要領は同じ。交差部分が自分の背丈ほどのトライポッドを作る。ここで結ぶロープには藤の根の外皮を使った。ツル状で丈夫なものならなんでもよい。
Step02
あらかじめ帆布の上下を筒状に縫っておいたものにパラコードと竹を通す。パラコード側を吊り、竹側がスネの真ん中くらいの位置にくるように調整する。安定したらツルで留める。
Step03
これで完成。背中側の支柱をずらせばリクライニングができる。パラコードは長めにとっておくとフレームのサイズが変わっても調整しやすくなる。ノットがずれなければ何でもOKだ。
04.D.I.Y. 『Cooker』
焚火用オリジナルビリー缶を作る
D.I.Y.の中でも金属製品は作り出すのが難しい部類になる。その中でもクッカーは難易度が高いのではないだろうか? ハンドルやハンガーがないなら空き缶でもいいのだが、それらを加工してつけるとなるとレベルは上がる。自信がついてきた中級者向けだが、ぜひ挑戦してもらいたい。
Material
酒類の厚手のアルミ缶(700ml〜800ml)
壊れたクッカーの
ヒンジとハンガー部品
アルミリベット
Tool
アクリルカッター
半丸ヤスリ
ドリル(ピンバイスでも可)
ハンマー
リベットポンチ
Working Process
Step01
アクリルカッターで缶上部の縁を削り切るように数周けがいていく。アルミが薄くなり穴があいたらそこをきっかけに切り取る。写真のようにしっかり缶を押さえながら同じ位置をけがくようにするのがポイントだ。
Step02
切り取った部分のバリを半丸ヤスリで落とす。この時クッカーの内側を傷つけないように注意すること。指で触りなめらかになるまでしっかりバリを取れば安心だ。
Step03
ヒンジをアルミリベットで留める。アルミリベットは市販のもので構わない。リベットの足が長い場合はニッパーなどでカットして使うとよい。リベットポンチを使い慎重に打つ。
Step04
アルミ製のハンガーハンドルをクッカーに合うように手でカーブをきつくしながらヒンジに差し込む。可動域を確認しながら微調整してスムーズに動くように加工する。
05.D.I.Y. 『Wood Gas Stove』
小枝や松ぼっくりが 燃料で高火力!
空き缶グッズの中でも人気のあるナチュラルフューエルストーブがこのウッドガスストーブだ。非常持出袋や自宅の食用備蓄にもある缶詰は比較的安く入手しやすく、日持ちもする。これを食料として消費したあと、道具に変えることができればエコなアイテムだ。しかしこちらも中級者レベルのD.I.Y.スキルが必要だ。
二次燃焼効果を利用し燃料も無駄なく消費する優れたストーブが自作できる。
Material
パイナップル缶
キャンベルスープ缶
鯖缶
Tool
アクリルカッター
金切鋏
サインペン
ステップドリル
プライヤー
Working Process
Step01
缶切りで切った切り口をプライヤーで平らにならす。燃焼に影響はないが使用時の安全性が向上する。こうした処理はしっかり行う。
Step02
パイン缶の開口部側の側面にステップドリルで直径8〜10cm程の穴を等間隔で一周あける。いきなり大きな穴をあけるのではなく徐々に広げるのが成功のポイントだ。
Step03
缶詰の底部分の一番内側のラインに沿ってアクリルカッターでケガキを入れる。中央に金切鋏で穴をあけ、ケガキラインまで切れ込みを入れていく。花びら状になった部分を手で持ち上げると簡単に切り離せる。
Step04
Step.3であけた穴をさらに拡張するように次のリブラインまで切れ込みを入れる。ここの切れ込みはおよそ5mm間隔でおこうとよい。切れ込みが一周できたら指で軽く内側に曲げる。この時エッジで手を切らないように注意だ。
Step05
スープ缶の側面の上下に等間隔で8〜10mmのドリルで一周穴をあける。パイン缶も同じだが、缶自体が薄いので最初から大きなドリルで穴をあけると缶が裂けてしまうことがある。ゆっくり丁寧に作業を行うことが失敗しないポイントだ。
Step06
スープ缶の底面に穴をあける。できるだけ多くの穴をあけたほうがいいのだが、最初はこの程度あけて燃焼の様子をみて拡張するか数を増やすようにするといいだろう。
Step07
スープ缶とパイン缶を組み合わせる。パイン缶のヒダを作った部分にスープ缶の底部を押し当てるようにして上から体重をかけるとすっと入っていく。ヒダが抜け防止のフィンの役割を働き固定される。
Step08
五徳を作る。鯖缶などの少し丈のある缶を利用して窓をあける。上下の縁を残しておくのがポイントだ。五徳は本体の底に収納できるので運搬にも便利だ。五徳の開口部は薪を補充する窓としても使える。
Step09
五徳はこのようにセットする。華奢に見えるが十分な耐荷重があり繰り返し使える。これで完成だが、燃焼させてみて空気穴の調整を行う。
01.D.I.Y. 『Gear.Spork』
快適に過ごすアイテムをいかに作り出すか!
素材はヤニを含まないものならなんでもいい。近所の伐採木や倒木、強風で折れた枝など、生の木を探そう。スプーンナイフはナイフワークに少しコツがいるが、生木なら簡単に加工ができるので初めてのウッドカービングにもオススメだ。スプーンナイフがなければ丸ノミや彫刻刀、カービングツールでも代用できる。
スプーンとフォークの機能を併せ持つスポーク。加工しやすい生木を使えば、サクサク削ってアレンジもしやすい。
Material
直径5cm程の生木
Tool
ハチェット(手斧)
ナイフ
スプーンナイフ
(ノミや彫刻刀でも可)
ノコギリ細目
リーマ(ドリル)
軽石(普通の石でも可)
トクサ(紙やすりでも可)
Working Process
Step01
適当なサイズの生木をハチェットで割る。長さは自身のクッカーのサイズと合わせると良い。真ん中から割るのではなく3分の1程度を割るようにすると削り代が多く取れるので失敗が少ない。
Step02
Step1の切り口の反対側を削る。この時は樹皮より5mm程度を目安に削り落とす。大まかな形になるまではハチェットで作業を行う。ハチェットはネックを持って作業すること。樹液や水分が多い場合は数分放置するか拭ってから作業を行うと手が滑りにくくなる。
Step03
大まかな形ができたらスプーンナイフを使用しスポーク部分を彫っていく。生木はこの部分の作業がとてもしやすく扱いやすい。スプーンナイフがない場合はノミや彫刻刀でもよい。
Step04
スポークとハンドル部分のササクレや凹凸を軽石で均していく。軽石がなければ角が丸まった小石でも代用が可能だ。力を入れすぎると割れるので注意。
Step05
マルチツールのリーマやハンドドリルで穴を2カ所あけ、先端と穴を繋ぐようにノコギリを入れる。ノコギリはできれば細工用の細目ノコギリがよいが、なければパイプソーなどでも十分作業が可能だ。粗いノコギリは避けたい。
Step06
トクサで表面をなめらかになるまで研ぎ、木材を乾燥させるため沸騰したお湯に5分程浸ける。逆さにしてハンドル部分も同時間茹でる。木に含まれる水分に熱を加えることで乾燥を促す工程だ。自宅でする場合はポリ袋に入れ電子レンジで数回温めと取り出しを繰り返す。
Step07
茹でたら焚火の上に吊るせば1,2時間程で乾燥できる。この時藤ツルの皮で吊るすと乾燥が藤ツルの乾き具合で確認できるので便利だ。