【vol.46】ナマズをいただきま~す

もうすぐ梅雨が明け夏が来る。暑い夏に体力が落ちないように、また、落ちた体力をつけるようにウナギを食べる風習がある。土用の丑の日だ。そこで、今回挑戦したのはウナギの……と言いたいところだが、なんせウナギは激減していて、採ってはいけないとまで言われるようになり、誌面ではとてもじゃないけど扱えない。なので、ナマズで蒲焼きに挑戦する。

ナマズは梅雨の時期に産卵期を迎える。本流(大きな川)から、支流に上り、田んぼや田んぼ付近の泥地で産卵する。雨が多く降って泥が流れていくと、その匂いで本流から上ってくると言われている。本来は田んぼで産卵するのだが、今の田んぼのシステムではなかなかそれができない。支流から田んぼへの道のりに邪魔をする堰などが待ち構えているからだ。上りたくとも上れないので泥地を探しそこで産卵する。以前、茨城県の田んぼで水道パイプから田んぼの水を水路に落としているところの下で、ナマズが何匹も上ろうとジャンプしているのを見たことがある。なんだか可哀想に見えた。

産卵期を迎える梅雨時期は、ナマズを釣る最高の時期とも言える。雨の後に田んぼの水路を見てまわるとナマズを発見できるはずだ!

まずは、いかにもナマズがいそうな小川を探し、田んぼへ出かける。ナマズ釣りはまず、餌のカエルを草で釣ることから始まる(奥山流)。イネ科の花の茎などを利用して、先に草を結んでカエルの前で虫のように動かす。慣れないと最初は難しいかもしれないけど、カエルに気づかれないようにそっとやれば、簡単に釣れる。この釣りの難しいところは、釣り上げた時に、カエルが口にくわえた草を放して落ちてしまうことだ。しかし、それはカエルの勝ちということなので、私は必ず自分の手で捕まえたものを餌にする(変なこだわりです)。よく釣れるのは、トウキョウダルマガエル。1匹のナマズを釣るのであれば、4~5匹のカエルで十分。ナマズ釣りの釣竿は、ルアー竿にリールを付け、糸の先には大きめなハリのみ。カエルの背中の皮にハリを刺し投げ込む。昼間のナマズは隠れていて姿をあらわすことは滅多にない。隠れていそうなところへ仕掛けを投げ込み、カエルを泳がす。それを何度も繰り返す。仕掛けのカエルは死んでしまったら泳がないのでできるだけ丁重に扱う。ハリはカエルの皮にさして皮から針先を出さないと外れやすいので注意。

自信満々で始めたものの、全くアタリがない! そして夕方になってしまった。何度投げたことか……。コンビニで買った夕飯を食べつつ、日没まで待つことにした。

夜行性のナマズは夜になると動き出す。餌の取り方が面白く、ヒゲを前にピンと張り、そのヒゲに動くものが触れると食らいつく。また、水面に動くものがあると襲いかかってくる。真っ暗な水路へ今度はど真ん中にカエルを投げ込む。カエルが泳いでいるのがなんとなく確認できた。ドキドキする瞬間だ。ルアーの世界だとトップウォーター、水面を動かすルアーだ。数回投げたその時、「ボコッ!」と水路から音が聞こえリールの糸がキューンと張り「キタァ!」こりゃでかい! まさにドキドキした瞬間だ。釣りは人一倍しているがこの瞬間は何度経験してもワクワクする。まずまずなナマズをゲットできた。これをさばいてナマズ丼をつくる。夜散歩がてら水路でナマズ釣りに挑戦してみよう!

ナマズは夜行性。昼間はおとなしくしているが、夜になると活発に動き出す魚だ。

イネ科の植物で茎の長いものを引っこ抜き、釣り竿を作る。タネを全て取り除けば竿のできあがり。

先に柔らかい葉っぱを小さく丸めて結びつける。これが餌になる。花などを使ってもいい。

カエルを見つけたら、気づかれないようにカエルの目線の先で虫がいるように動かす。どきどきだ!

飛びついてきたら、そっと竿を上げて釣り上げ、草を離して落ちてしまう前に素早くカエルを掴む。

トウキョウダルマガエルを5匹獲得! 大きさはまばらだが、小さすぎなければ餌になる。

カエルの皮にハリを刺す。ハリ先は皮をぶち抜く。深くハリを入れるとカエルは死ぬ。

いかにもいそうな水路! ところが……カエルは泳いでくれてるのにうんともすんともいわず、日没!

日が落ちて暗くなってから、ついに釣れた! 産卵を控えて丸々太ったナマズをゲット。この時期のナマズは脂がのっている。

今回はこのナマズを美味しくいただきます。ナマズは唐揚げが一番美味しいが、土用ということで蒲焼きにした。

ナマズの蒲焼きに挑戦

 

1.まずは腹から包丁を入れ内臓を取り除く。ぬるぬるで滑りやすいので軍手をする。緑色の部位は卵。煮付けて食う。

2.頭を落とし、背骨に沿って丁寧に包丁を入れひらきをつくる。骨が硬いので力がいるが丁寧に少しずつ進める。

3.ひらいたら中骨を取り除くのだが、できるだけ身を落とさないように刃先で骨に沿ってゆっくり慎重にやる。

4.ひらきができたら、腹側の腹ビレの部分に包丁を入れて切りとる。ナマズはこのヒレが長いのが特徴。

5.背開きにしたナマズ。鱗がないことを触って確かめよう。ナマズは皮と身の間がうまいので皮はひかない。

6.本来は串を打つのだが、そのまま半分に切って焼くことにした。中火でできるだけ焦がさないように皮から焼く。

7.皮側に焦げ目がついたら裏返し、同じようにゆっくりと焼いていく。身の厚みにビックリ。食べ応えがありそうだ。

8.両面焼いたら、水を張った鍋に蒸し器をセットして弱火で20分蒸す。蒸すと柔らかくなるのだ。

9.蒸し終わったら、うなぎのタレに漬け弱火で焼く。これを2~3回繰り返す。匂いで言えばうなぎの蒲焼!

10.表面身に色がつくくらいタレで焼いたらできあがり。うなぎのタレはずるい! これはほぼうなぎの蒲焼だ!!

11.熱々ご飯にタレを少しかけ、ナマズの蒲焼をのせてしめのタレを軽くかける。最後に山椒をふってできあがり。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。