今年の気候はかなり変化に富んでいた。秋も暖かい日が続いてなかなか寒くならなかったが、ここ最近になってようやく寒くなり、冬らしくなってきた。冬はやることが少ないと思いがちだが、冬ならではの色々な野遊びが待っている。葉の落ちた雑木林は殺風景だが歩きやすく、地形を見に行ったり、野池を探したりと気になるフィールドを散策するには最高の季節でもある。
雑木林を散歩していると、やたらツル植物が多いことに気がつく。全部が全部わかるわけではないが、葉を落とした雑木林ではツルが目立つので、ついつい採集してしまう。
中でもアケビのツルは万能で、覚えておくと道具を作るのに何かと便利だ。今回は、このツルを使いカゴを編んでみることにした。決して上手ではないが、何度も作ることで上手くなっていくので、冬の散策に出るとつい採集してきてしまう。
アケビのツルは保存がきくので少しずつ集めることも可能で、たくさん集めてから何か作るということができる。奥山家では私が子供の頃、私のおじいさんの時代からつるカゴを編んでいて、親父も上手くカゴを編む。私はそれを見て育ったので、上手に編みたいと、どこかでいつも思っていた。数年前から編むことを始めたのだが、なかなか上手くは編めず、いまだ練習中だ。
アケビのツルと似たツルはあまりないが、しいて言えばクズが似ている。しかし、クズのツルはどちらかというと草なので長持ちしない。ツルが素直に伸びているので何かを編むための練習用にはなるが、作品は時間が経つにつれやせ細ってしまう。長く愛用するには向かないのだ。アケビやクズのツルは、やや白っぽく、見慣れてしまえばすぐに覚えられ、あまり間違えることもない。アケビには3枚の葉のミツバアケビと5枚の葉のゴヨウアケビとがあり、どちらでもツルは使える。また、意外とそこら中に生えているので、材料としても集めやすい。アケビのツルはクズと違い、地を這わずに何かに巻きつきながら成長しているので、まっすぐ伸びているツルを探すのが困難だ。
しかしながら、ツルのクネクネ感を逆に味としてカゴを編むと、個性が出て面白いものができる。ツルの採集では、まずできるだけ長く切ることと、太さを揃えることが大事。作るカゴのイメージがあるのであればそれに合わせたツルを採集する。アケビのツルは巻きぐせがかなり強いが、採集してからかなり日にちが経っていてもお湯につけることでしなやかになる。
また、編む前にどんなカゴを編むのか想像してイメージを作っておくと作りやすい。いろいろなカゴを見本にするといいだろう。今回作るのは、果物を入れるなど日常で使えるカゴで、しっかり編み込んだ丈夫なものだ。
まずはカゴの大きさを決め、それに合わせて6本に切る。3本ずつ十字にセットし、編んでいく長いツルを用意する。編んでいく長いツルは、採集してきたツルの中でも素直に伸びていて、太さが揃うものを用意する。手順は写真を見てもらえればわかるが、最初の巻き始めの部分と編み終わった最後の処理は、慎重にかっこよく作って欲しい。
アケビのカゴは、かなり長持ちするので、末長く愛用できる。また、色んなタイプのカゴを編むことで、様々なシーンで使える。編む楽しさと、使う喜びを経験して欲しい。
道具
ツルを切る道具はナイフでもいいが、枝切り鋏がいい。専門の道具は使いやすく非常に便利だ。高いところは高枝切り鋏もいい。
雑木林の中を散策しながらツルを集める。いたるところにアケビが生えているので、太さや巻きぐせを見ながら、いいツルを採集して回る。
アケビのツルを手っ取り早く探す方法は林道だ。林道の路肩を見て回れば藪漕ぎをしなくてもに手に入る。ただし手入れの行き届いた道では草刈りの時に切られているので注意。
ツルといっても様々な種類が存在する。冬になり、木々の葉が落ちるとツルは目立つので探しやすい。アケビのツルがわかるかな?
今回採集したツルはミツバアケビ。まだ葉が残っていれば簡単にわかるが、葉が落ちている場合はツルで判断することになる。ツルの色に特徴があり、灰色(グレー)のものを探す。
見分け方
アケビと間違えやすいツルのクズ。色が似ているが、葉の落ちた跡、(葉痕)が顔のような模様になる。また、若いツルには毛が生えている。クズのツルはやせるので、カゴには向かない。
こんなツルを探す
右の写真は伸び始めから木に絡み巻きながら成長している。左のツルは、伸び始めからある程度まっすぐに伸びて成長している。左の方が編みやすいツルだ。
ミツバアケビのツル
アケビは何種類か存在し、よく見つかるのはゴヨウアケビとミツバアケビだ。共にツル細工には向いていて変わりはない。今回はカゴを編むのでたくさんのツルが必要となる。両手いっぱいのツルを採集した。
作り方
1.カゴの大きさ深さでツルを切り、同じ長さで6本用意する。
2.3本ずつまとめて十字に置く。編んでいくツル(長いもの)を1本用意する。
3.編んでいくツルを下に入れ、他6本の深さを同じに揃える。編んでいく方を長くする。
4.束ねた3本に、編んでいくツルを上下に編むように1周巻く(緩まないように強く)。
5.今度は2本ずつ(上2本下2本)、上下に編むように1周編む。
6.次からは1本ずつ編むように巻いていく。
7.何周か巻いていく間に1本1本の間隔を広げていく。
8.支えになるツルを、隣のツルとの距離が均等になるように編む。
9.カゴの底の大きさまで編んだら飛び出している13本を立ち上げる。
10.ツルの継ぎ足し方。ツルがなくなる2つ手前で継ぎ足していく。
11.カゴの深さまで編んだら、飛び出た13本の処理。1本を2つ隣の支えに差し込む。
12.全部処理をしたらカゴの出来上がりだ。
13.押しながら歪みなどを直し形を整える。
14.余ったツルで持ち手を作る(写真は三つ編みで作った)。
15.3箇所にそれぞれ差し込む。反対側も同じように差し込む。
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。
完成品
余ったツルでざるも作った。まだ形が綺麗ではないが、こんな風に毎年作っていればどんどん上手くなる。冬の野遊びとしてぜひやってもらいたい。