今回のテーマ:カメノテをいただきま~す
暑い! 暑い! 今年の夏は何度叫んだだろうか、とにかく暑い日が続いた。こう暑いと、水辺に逃げるのだが、今年は山での仕事が多く、川にもいけない日々が続いた。夏に強いはずの私でも、疲れ果ててしまった。歳ですかね~、体力つけねば。
そんな忙しい日々の間をぬって、半ば強引に海へと繰り出した。磯遊びだ。毎年通っている海も、今年は水温が少しぬるく感じた。
やっぱり水辺はいいね~。気持ちがリフレッシュされる。磯の潮間帯には色々な生き物が存在し、見ているだけでも楽しい。何より何十年も同じ場所に通っているのに「なんだこれ?」ってのが必ずいる。主にシュノーケリングで魚を見たりしているが、大抵の生き物は名前がわかる。しかし、今回1㎝にも満たない幼魚でわからないものが2種類もいた。こんなことがあるから観察はやめられない。台風などの影響で流れ着いたのだと思うが、幼魚すぎて調べても未だ謎のまま。
海に入らなくても磯は楽しい。生き物が豊富だからだ。小さな貝や変な形の生き物など、観察すればするほど色々見えてくる。磯にできたプールでは、上から覗くだけで様々な生き物が動いていて、まるで天然の水族館のようだ。磯遊びを楽しく長い時間遊ぶには、大潮の日の干潮の2時間前あたりから遊ぶのが良い。潮の上げ下げの幅が大きな大潮は、それだけ見られる範囲が広くなるからだ。
波打ち際の岩場で大量に飛び出ているカメノテを発見した。岩の隙間から生えるように移動もせず生きているこの生き物はなんと甲殻類。カニやエビの仲間だ。このカメノテは知る人ぞ知る珍品激ウマ素材。ずいぶん昔に漁師さんから頂いて食べたことがあるが本当に旨い。その時は味噌汁でいただいたのだが、出汁がすごい! そして食べるのは面倒だが身が旨い。見た目からは想像もできない美味しさだ。そもそもエビ、カニの仲間なのでまずいわけはないのだ。
こんなに採りやすい場所に生えてるのは珍しいので、ビニール袋いっぱい採って帰った。採り方はできるだけ根元を多く採る感じでねじるように採る。バールやマイナスのドライバーなどで岩を破壊しながら採る人もいるが、あまりいいとは言えない。できれば、ねじって素手で採ることを勧める。ガツガツ採らずに観察しながらゆっくりと採ろう。
というわけで今回の食材はカメノテ。カメノテで出汁を取り、ラーメンに挑戦してみた。ちなみに、このカメノテと同じように漁師が絶賛する出汁取り素材としてフジツボがある。カメノテ同様甲殻類で、同じように出汁が出る。しかし、めちゃくちゃ採りにくく面倒だ。味が知りたい人はぜひフジツボにも挑戦してもらいたい。
海の生物には漁業権があり、採ってはいけない物が多く存在する。それは地域でかなり違うのだが、こんなものまで(?)採ってはいけないのか、というものもあるので、遊ぶ場所を管轄する漁協に電話などで確認して誤解のないように採集しよう。私は漁協の人や警察から職質のようによく声を掛けられる。よほど怪しくみられるんだと思う。そんな時にちゃんと確認さえ取れていれば堂々と遊べるので、その辺のマナーはしっかりと守ろう。
今回紹介したカメノテは採りすぎても冷凍保存が効くので採りすぎた場合は冷凍し、次の料理に役立てられる。
波がかぶるような潮間帯の岩の隙間に根をはる。
熱中症にならないように帽子やタオル・素手では怪我をするので軍手。磯は滑りやすいのでできれば磯たび、なければサンダルやシューズに靴下を履かせる。採ったカメノテを入れる袋。採ったらすぐにクーラーボックスへ。
カメノテ
カメの手のような形からこの名がついた。波が強く当たるような場所に多く見つかる。海水が上がってくると、先のすき間から鳥の毛のような脚を出しプランクトンなどを食べる。食べる部分は岩の隙間などに伸ばす柔らかい柄の部分。
身を食べるのであれば、できるだけ柄の部分を長く採るようにする。この中の身が旨い。左は柄がない。
カメノテラーメン挑戦
1.真水で綺麗にゴミや海藻などを落としてネット(出汁袋)に入れる。沸騰させてバラけないように。
2.水から茹でる。水から茹でると身が伸びたまま茹で上がる。
3.グツグツさせ、アクを取り除く。味を見て塩を足してもいい。
4.器に出汁を入れ、茹で上がった麺を入れる。
トッピングにアオサとメンマ。茹で上がったカメノテをドッサリ入れる。カメノテは柄の部分を取り除くと中に薄赤色の身が出てくる。それを食べる。シンプルな磯味カメノテラーメン完成!
おまけ!!
茹で上がったカメノテは身を食べる。柄を折るようにして割るときれいに皮が剥ける。
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。
クロフジツボ
波のかぶる場所に多く見つかる。海水が上がると触手が出てくる。
マツバガイ
皿を逆さにしたような楕円な形の貝。貝にマツバのような線がある
ヒザラガイ
表面に鎧をつけた貝。海水が上がるとズルズル動き出す。
ヒジキ
あのヒジキだ! 生えている姿と商品とはえらく違うのがよくわかる。
アラレタマキビ
とても小さな巻き貝で海水を嫌い、岩の海水の届かないところにいる。
イシダタミガイ
レンガを組んだような柄の貝。食べても美味しい。