今回の特集テーマは実践的な焚火レイアウト。ゆえにより根源的な火熾しに関しては次回以降のお楽しみとなるが、ここでは我々野営好きの基礎知識として少しおさらいしておきたい。コピーでもして、いざという時の“あんちょこ”として使ってもらえれば幸いだ。
TOPIC.01 IGNITION
定番の火熾し術
より原始的な火熾し術は多々あるものの、そもそもノコギリやクッカーを用いて楽しむ野営であればそこまでストイックにならず、工作や獲物獲得に時間をかけるのも吉だ。というわけで、ここでは定番の道具から比較的現実味のある緊急対策法までをピックアップして紹介したい。最も身近な火熾しは当然マッチやライターだが、初心者には意外とここから焚火を熾すのも難しかったりする。まずはこれら文明の利器を借りて、着実に焚火を熾していきたい(TOPIC.02参照)。

ファイヤースターター(マグネシウム)
マグネシウムを主成分とした棒状のマッチ。ナイフの背でメタルマッチを急速に削り取ると、摩擦熱からマグネシウムが燃焼し、激しい火花を散らせることができる。

マッチ(フリント式ライター)
それ自体が火口要素を備えている現代の着火法であり、焚き付けに直接着火させることもできる。ライターを使用する場合は環境に左右されにくいフリント式がお勧めだ。

レンズ
双眼鏡やカメラから取ったレンズ、コンパスの拡大鏡、水を入れたペットボトルの凸面を使い、火口に太陽光線を焦点させる。

バッテリー
12Vの高電圧タイプならショートさせるだけ、9Vの乾電池ならスチールウール、1.5Vの乾電池ならガムの包み紙を介して着火できる。

工具(カーボンスチール)
ナイフやノコの素材として使われる炭素鋼で河原に落ちているチャートなどを打つと、摩擦熱から炭素が燃焼して大きな火花が散る。
TOPIC.02 MAKING A FIRE
確実な焚火の熾し方
火口に点火できたなら、次はその種火を確実に焚火へ移すことが重要だ。焚火において最も落とし穴となっている要素は熱なので(特集冒頭参照)、ここでも常に熱を意識しながらの作業となる。要は熱を逃がさず、小さな木枝を着実に熱していき、可燃ガスを取り出していけば良いのだ。コツは十分な焚き付けの量をもって種火を囲い込み、熱が溜まるのを“待つ”こと。火種が小さなうちから空気を吹きかけてしまえば、熱まで吹き飛んですぐに失火してしまう。

天然の綿毛などを火口に用いていて火力が弱い場合、まずは枯葉などの燃えやすい素材へ火を移した方が成功率が高い。

続いては空気の導入よりも熱の蓄積を考え、小枝などの焚き付けで火種を覆う。白樺など、強力な火口を使った場合はこの行程からでも◎

何もせずにしばらく待つと、火口からの熱が焚き付けに内包される可燃ガスを引き出して小さな炎が上がる。ここでは場合により焚き付けを追加。

より大きく焚き付けから炎が上がれば、この段階から意図的に空気を入れて薪への着火を促しても良い。これで焚火に火がついたも同然だ。
市販の薪を用いる場合


市販の薪は最大サイズで揃っているため、ここからバトニングなどで薪を細分化したい。着実に火を育てるなら焚き付けサイズに至るまで3~4サイズを用意し、その際に生じた木片やおが屑は火口として使う。
TOPIC.03 IN THE RAIN
雨天での焚火熾し

実を言うと「実用焚火リスト」の取材日に台風が直撃(暗めの写真は雨天)。すべてがズブ濡れの中で火を熾す際、最も効果的なのは焚き付けを手持ちし、強力な火口で隈なく炙り乾かすことだ。取材時は唯一湿る程度にとどまったランタンの外箱を細切れにして燃やし、小雨の間に丹念に小枝を乾かして火を移した。焚き付けに火がつけば、あとは延々と焚き付けを燃やし続けて薪を乾かせば良い。
TOPIC.04 NATURAL TINDER
自然界にある火口
自然界には実にさまざまな火口が落ちている。編集部ではファイヤースターターの火花で着火できるものを火口の基準としており、砕いたり裂いたりして着火するものも含めれば結構な数になる。ここでは代表的なほんの一例しかピックアップできないが、日頃よりファイヤースターターで火がつくものを探しておくと野営時に役立つだろう。

枯葉
広葉樹から針葉樹まで種類は様々だが、砕くなどの手間を加えれば多くに着火する。杉っ葉は定番。

木屑
乾いた木片を薄く削ったものや薪を砕いた際に出た破片も有効な火口となる。入手しやすいのも魅力。

球果
松ぼっくりに代表される球果はよく油分を含んでいるので有力。そのまま焚き付けとして使っても◎

樹皮
白樺の樹皮は言わずと知れた定番。杉の樹皮も揉んで繊維状にすれば良い火口となってくれる。

綿毛
ススキの種子に代表される自然界の綿毛も、微量な熱で可燃ガスを引き出せるので使いやすい。
TOPIC.05 D.I.Y. TINDER
身近な火口の作り方
身の回りにある燃えやすいものを巧みに使えば、自分の力で高性能な火口を作り出すことができる。着火剤としては火のつきやすい炭を用いたもの、ロウを用いたもの、油分を用いたものなどがあり、それに加えて火花の熱をキャッチしやすい綿毛をドッキングさせたものもある。最も定番の自作火口と言えば麻紐を解いたジュートだが、ここではもう一手間を加えた火口を紹介しよう。

チャーティッシュ
コットンを用いて伏せ焼きしたチャークロスも有名だが、より身近で簡単にできるチャーティッシュもお勧め。その名の通り、ベースとなるのはごく普通のティッシュ。軽量コンパクトな使える火口になる。



まずはティッシュを折りたたんで人差し指大の大きさにしておく。続いて火で炙っても穴が空かないよう2つ折にして強度を出したアルミホイルで包み、最後にワンバーナーなどで伏せ焼きにする。ティッシュの可燃ガスが隙間から噴出して火がつき、それが消えたら完成だ。

ワセリンティンダー
優秀な焚き付け「ワセリン」を優秀な火口「コットンボール」に染み込ませた、超優秀な火口~焚き付け両用着火剤。使用する際はまずコットンボールの繊維をナイフなどで毛羽立たせておき、そこに火花を当てればすぐに着火する。



用意するのは消毒や化粧に用いるコットンボールとお馴染みのワセリン。まずは作りたい量に合わせて適量のワセリンをバーナーで熱し、サラサラな液体となるまで溶かしていく。続いてコットンボールを投入し、溶かしたワセリンを満遍なく染み込ませたら完成だ。