【vol.75】ホシザメをいただきま〜す

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今回のテーマ:ホシザメをいただきま〜す

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投げ釣りの外道としてほぼ日本中で釣れるサメ。大きくなっても1mを超える程度。鋭い歯はなく小さな歯が並ぶ。卵胎生。

夏だ。猛烈な夏だ。夏だから暑いのは仕方ない、好きな季節なので嬉しいはずなのだが、あまりに暑すぎる! 連日の猛暑日で、身体が悲鳴をあげている。山へ出かけても、日陰を探しながら行動する始末。できるだけ暑さと闘わないように逃げることが熱中症対策だ。

つい数日前のこと。仕事帰りに海辺を走ったので、何か釣れているかなと気になって港に立ち寄った。釣れないのか暑すぎるのか、いつも満員の堤防もガラガラ。数人が投げ釣りをしていただけ。何が釣れるのか釣りをしていたお兄さんに聞くと、「今年は回遊魚がほとんど釣れなくて、投げ釣りでアナゴを狙っています」とのこと。「たまにキスやマゴチが掛かるんですよ」と言っていた。そのお兄さんが、可愛らしいサメを釣り上げた。見ると、ホシザメの赤ちゃん。ちょっと興味があったので見せてもらった。こいつがアナゴよりかかるのだと嘆いていた。

昔、九州の友達の家で美味しいホシザメを食べた記憶がある。サメというとあまり美味しくないイメージと臭いが先行して今まで見向きもしなかった魚の一つだ。

お兄さんは竿を2本投げてあたりを待っていた。1つの竿の鈴が鳴った。「キタ!」とお兄さんが合わせてリールを巻くと「あっ!今度は少し大きいですね」と言う。「何ですか?」と聞くと、「サメです」と、リールを巻いている途中で答えた。釣りもベテランにもなると巻いている時の感覚でかかった魚がわかるのか! すごいな。私は姿が見えればすぐわかるけど。バシャバシャと音を立てながら一気にごぼう抜きした獲物は本当にサメ。約60cmのホシザメだ! ホシザメはスリムな体に白い点々模様が散らされているのが特徴。「このサメ、湯引きで美味しいんですよね」とお兄さんに言うと、「持ってきますか?」と。どうやらもらえるようだ。「えっ、嬉しいです。もらえるならください」と言うと、さっとナイフを取り出し「血抜きしときますね」と手際よく捌き始めた。内臓まで取ってくれてありがたく頂いた。「サメは食べるならサッサとしめないと、アンモニア臭がキツく食べる気が失せるんですよ」と教えてくれた。コンビニで氷を買い、氷と一緒にサメをビニール袋に入れて足早に帰った。

下処理をしてもらったためかほとんど匂わない。前に挑戦した時はあまりの匂いにめげてそのまま捨てた。そんなこともあり、サメにはなかなか手が出せなかったが今回はバッチリなはず。かなり前の話だが美味しかったホシザメの湯引きに挑戦だ。

このサメを狙って釣る人は少ないかもしれないが、決して不味い魚ではないのでチャンスがあればぜひ試してもらいたい。中骨は忘れずに取り除いてくださいね(笑)。

ポイントは釣った直後の下処理!ホシザメを美味しく食べる

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全体にスタイルがいいスリムなサメ。尾ビレが独特な形でサメそのもの。背中は灰褐色で腹は白い。

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ドジザメ科のサメ。頭は鼻が尖り、顔全体が薄っぺらい。目はやや上の方についていてサメらしく少し怖い。

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体の背中の部分に名前の由来でもある白い点々が並ぶ。エラは胸エラの付け根のところに5本。いかにも“サメ”って感じだ。

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ジョーズみたいなイメージの歯ではなく、細かな歯が並ぶ。底物を食べている。口も横に裂けておらず大きくはない。

ありがたい

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サメをくれたお兄さん。サメは釣りたくないのにほぼ毎回掛かるという。

ホシザメの 湯引き

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下処理を現場でやってもらった頂き物のホシザメ。これを湯引きで美味しく食べます。

下準備

 

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1.一度、水で全体を洗い流しタワシなどできれいに洗う。腹側も同じように洗う。

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2.エラの後ろの位置で頭を落とす。サメは背骨はあるが軟骨でできている。そのかわり皮は硬い。

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3.ここで大きなミス! 長いのでぶつ切りにしてしまった。本来はここで三枚に下ろす。

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4.全てのヒレを切り除く。ヒレは軽く茹でて鮫肌を取り除き天日で干せば食材のフカヒレになる。

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5.ヒレを取り除いた身。量があるので半分は唐揚げに。この後鮫肌を取り除くので熱湯を用意。

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6.水を沸かし熱湯を作り、身をさっと30秒ほど入れる。その後すぐに氷水につける。

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7.氷水からあげて、タワシなどでザラザラした鮫肌を擦って落とす。細かな鱗でできている。

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8.鮫肌が残ると食べた時に違和感を感じるので、タワシで取れない部分は手でしごきとる。

茹でる

 

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1.軟骨なのでそのまま薄くぶつ切り。本来は三枚に下ろし、中骨は使わない。軟骨とはいえ硬くて食べにくい。

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2.ぶつ切りにした肉。背骨がめちゃくちゃ気になる……。魚なのに背骨を取ることを忘れてしまった。

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3.ぶつ切りにした身を沸騰した湯でさっと茹でる。長く茹でると身が硬くなるので好みで調整する。

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4.茹でた身を氷水に浸けて冷たくすれば完成だ。タレは白味噌と酢、砂糖を、味を見ながら混ぜて作る。

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完成!

今回の料理は失敗もしたが、まぁ合格だ。背骨が気になるところだが、身を食べたら口から骨を出せば良し。とにかく美味い。匂わなかったのが大正解だった。

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ヒレ

ホシザメのヒレでフカヒレを作ると小さくてほんの少ししか取れない。ヒレだけを丁寧に削ぎ落として作る。

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オス

サメのオスには交接器(生殖器)が2本ある。ホシザメの場合、メスは体の中で卵を孵化させる卵胎生だ。

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日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。