【vol.75】第43回 伝統保存食入門

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赤エビの青唐辛子醤油漬け

寿司ネタでも有名な赤エビ、刺身で食べられる新鮮なものが1度に食べきれないほどあるとしたら?答えのひとつが「醤油漬け」だ。日毎に染みていく醤油の味とネットリと熟成していくエビの味。辛口の日本酒を用意して是非どうぞ!

エビはミソがヤバイ!

エビやカニ類は足が早い。つまり悪くなりやすいものの典型と言ってもいい。今回紹介する「赤エビの青唐辛子醤油漬け」は生の状態のエビを醤油に漬けることで2週間ほど保存でき、さらに味を劇的に上げることができる画期的な方法だ。コレはまさにすごいことなのだが、出来上がったものは一言で言うと完璧に「酒の肴」であり、朝食のシリアルやヨーグルトの脇にあるものでは決してなく、非常に嗜好性の高い食べ物ということができる。もちろん朝からエビの刺身を食べようという人もそうそういないだろうけれども。

南仏の海鮮鍋として有名なブイヤベース、このスープのポイントもエビのミソで、新鮮なエビの頭がない時には作らないとも言われている。つまりエビの頭からはそれだけ濃厚ないいダシが出るということだ。和食系の居酒屋でもエビ好きの人は見ればすぐ分かる。女性でもお行儀なんかには構わずに外したエビの頭をチューチュー啜っているからだ。カニミソが旨いのと同じでエビのミソは他には代え難い濃厚な旨味が詰まっている。日本人でもフランス人でも、本当に旨いものを知っている人はエビの頭を見逃さないのだ。醤油ダレに漬け込んだ赤エビの頭も絶品だ。
 
またエビのダシが出た漬けダレも濃厚な醤油になっている。一度煮立ててから料理に使うと味がぐんと深まる。お試しあれ。

【材料】
赤エビ6~8本、醤油300〜400cc、みりん300〜400cc、日本酒150〜200cc、青唐辛子5~10本

【作り方】
❶醤油、みりん、日本酒を混ぜ合わせ、軽く煮切って冷ましておく。
❷青唐辛子はスライスして種を取り除いておく。激辛がお好みの人は種を入れてもいいが、エビの味が分からなくなるようでは困る。
❸エビは尻尾を残して殻を剥き、脚を取り除いておく。
❹背中の中心に切り込みを入れ、竹串などを使って背ワタを取り除く。背ワタはエビの腎臓でここに老廃物が溜まる。残しておくと変な苦味の元にもなる。
❺広めのタッパーなどの密閉容器にエビを並べ、青唐辛子を載せてから醤油の漬け汁を注ぐ。エビがヒタヒタに漬かるようにしておくこと。
❻冷蔵庫で保管し、3日程度から漬かり始める。僕は5日~1週間は待つようにしている。
❼そのまま食べるのもいいが、ガストーチで軽く炙って食べるのもまたいい。2週間程度のうちに食べきること。

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青唐辛子は爽やかな辛さで、タカノツメとはまた違った味わいを見せてくれる。いつでもあるというものではないので、ない時にはタカノツメやハラペーニョなどでも代用可能。トウガラシ類は保存効果も高めてくれる。

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エビの背ワタは面倒がらずにきちんと取ること。時間が経てば経つほど苦味や臭みが強くなるので、今回のような漬け込む調理の時には絶対に欠かせない作業。

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漬け込む際にはジップロックなどのビニール袋に無造作に入れるのではなく、固形の容器にきれいに並べておくようにしたい。仕上がりの美しさを大きく左右する。

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写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。