今回のテーマ:アジのみりん干しをいただきま~す
アジといえば馴染みのある魚で、フライや刺身、なめろう、干物、南蛮漬けなど食べ方も色々。今回はみりん干しに挑戦した。
コロナ禍になってからどうも周りで釣りが流行っているようだ。今まで釣りなんて誘っても来なかった仲間から毎週のように、LINEで釣果が送られてくる。人の釣った魚にはまったく惹かれないがこう何回も送られてくると、上手いところを見せてやるかと闘争心に火がつく。仕事終わりの夕方から夜に防波堤釣りに行き、カマスやアジなどを釣っているそうだ。しかもルアー釣りだ。「アジング」といって結構流行ってるらしい。根っからの昭和気質な私はアジといえばサビキ釣りで、カゴにコマセを入れて無数のサビキ針で釣るものだと思っていた。アジングはルアー竿に細い糸のリールに1~2gのジグヘットに小さいワームをつけるらしい。
仕掛けを聞いた私はこっそり夜の防波堤に出かけた。防波堤には19時に到着。潮の関係もあるがこんな時間にアジを釣ったこともないし、ルアーで釣るのも初めてだ。何より寒すぎだ(負けず嫌いではあるが寒さには弱い)。ここで釣れるよ、という防波堤には2m間隔ぐらいで釣り人が何人も並んでいる。平日の夜にこんなに釣り人がいるなんて驚きだ。
しばらく見ていると大半の人がアジングで、餌釣りは少ない。ルアーを投げている人は釣れていないが、餌釣りの人はちょいちょい釣り上げている。やっぱねって感じだが、空いている場所でやってみることにした。釣りには自信があったが、2gが全然飛ばない。なんだこの釣り!? みんなもそうなのかと周りを見ると、ものすごい音をたてて投げている。あっちこっちで投げる時の竿の唸り音が聞こえる。向かい風で2gのジグを投げると5mくらい先に落ちる。糸を無理矢理出して落ちた場所に沈める。その後、ものすごく遅くリールを巻く。寒さに耐えながら小さく動き、周りを見ながら真似するように30分……。当たりもなければ周りの釣果もない。ルアー釣りの醍醐味が感じられない。飽きてきたぞ。餌釣りの人は釣れているようだ。寒さが身に沁みてきた。いつもの〝釣れる気がしない気分〟になってきた。こうなると目の前の海に魚は1匹もいないんじゃないかと思い込むようになり、身が入らない。
水面に魚が跳ねるようないわゆるもじりが見えたと思ったら両サイドの2人が続けざまに何か釣れた。えっ?とキョロキョロしてる間に俺の竿にも当たりがキタァー! 薄暗い中、リールを巻いて釣り上げて見ると、ヤッター! マアジだ。釣れた! アジでこんなに嬉しくなれるなんて。これか、みんなこの感覚が楽しいんだな。釣ったアジをバケツに入れてすかさず投げると立て続けに釣れた。たしかに日中も回ってくると(回遊してくると)しばらく釣れる。夜でも回ってくるんだなと思いながら4匹ゲットできた。しかしルアーは1本針。餌釣りの人と桁が違う。寒くなくて、もう少し面白いように釣れるなら確かにルアーもいいが、とにかく寒すぎる。私はどちらかといえば餌釣りの方がいいな。
今回の釣りは俺にとって耐寒訓練だった。4匹釣れたところで寒さに負けて竿を畳んだ。辛抱が足らんね。ともあれ釣れることがわかったし、やっぱり夜釣りは夏だなと尻尾を巻いて終了。
【極寒】-7℃の夜の防波堤釣り
仲間からの誘いでアジ釣り。“楽しい!”“釣れる!”とあまりにも騒ぐので、アジングってやつをやってみた。この日はなんと-7℃。真冬の防波堤は寒く過酷な釣りとなった。
仕掛けはルアー竿とリールに0.6~0.8号の糸。1~2gのジグヘッドに4㎝くらいの細長いワーム。
冬の夜の防波堤は神秘的だがとにかく寒い。服装は重ね着。それでも寒い極寒だ。
「今釣れてるんですよ」ってこんな写真が毎週のようにいろんな友人から送られてくる。アジやサバ、カマス……火がつかないわけがない。
やっと1匹!
寒さに負けて半ば帰りかけた時に回ってきたアジ。今回は30cm前後のアジを4匹ゲットした。潮や回遊のタイミングで釣果は全く違うようだ。
他にこんなものが釣れた
カマス
大きなカマスは四国で夏に釣ったことがあるが、回遊しているとアジと同じ仕掛けで釣れる。
イシモチ
練り物では最高級の魚だ。少し小さいが30cm前後のサイズが数匹釣れた。塩焼きで美味しく食べた。
アジのみりん干し
<01>下処理
アジにはぜいごという特殊な鱗が尾ビレの付け根のところにあるので削ぎ取る。包丁を立てて鱗を取り、頭を落とす。
<02>開く
頭側から背骨に沿って背中の皮を残すように開きにする。内臓と血合いを綺麗に取り除く。
<03>漬ける
みりんと醤油を1対1の割合に混ぜた漬け汁をボウルやビニール袋などに入れ、身を開いた状態で3~4時間漬け込む。
<04>干す
白胡麻を振ったら、ザルの上やネットの中に入れて、日の当たる場所で4~5時間天日干し。真冬は心配ないが、他の季節だとハエが卵を産みにくるので注意。
<05>焼く
みりん干しはどんな魚でもすぐに焦げるので焼くのが難しい。弱火でじっくり焦がさないように焼くのがコツ。
完成!
不味いわけがなかろう! こりゃ旨い。魚嫌いの子供たちにもおすすめだ。みりん干しっていうと旅館などの朝食でしか食べた記憶がないが、こうして作ると簡単で、たまに作りたくなる。色々な魚で挑戦したい。
日本野生生物研究所 奥山英治
主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。