【vol.67】ナチュラル・ビーチコーミング

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今回のテーマ:ナチュラル・ビーチコーミング

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海辺のゴミの中から骨や貝殻などを拾い集め、標本にする。拾ったものが何かわからなければ、それを調べることも楽しい。

今季はかなり遅れて冬が来た。ものすごく寒いという感じではないが、朝晩は冷え込むようになってきた。寒いのが苦手な私は、冬がとにかく苦手。釣りでもなんでもそうだが、寒いとそれだけでやる気を損なうのだ。冬の遊びは寒さに負けない装備で気持ち良く遊びたいものだ。

今回はビーチコーミング、海のゴミ拾いだ。しかし、ゴミといって馬鹿にはできない。人の捨てた人工的なゴミではなく、生きものの死骸などを拾い、飾れる標本のように仕上げる。名付けて〝ナチュラル・ビーチコーミング〟。ビーチコーミングは季節を問わないが、私は冬によく出かける。風のない穏やかな日は暖かく、気持ち良く遊べるからだ。何か新発見があると思うと、寒い冬の海でもまったく苦にならない。何よりコレクションが増えていくのが楽しい。拾った本人がゴミと思うか思わないか次第なのだ。特に面白いのは拾った貝殻や骨などの名前を調べる作業だ。明らかに特徴があるものは少し調べればわかるのだが、かけらしかないものや特徴が少ないものは何日もかけて名前を割り出す。

拾うポイントは砂浜、磯、漁港など。ビーチコーミングはゴミ拾いに近いものがあるので、ゴミの溜まりやすい場所を探す。海でも流れや風によってそういった場所ができるのだ。また、漁港などもいいポイントだ。漁師の捨てた魚などが見つかる。私の場合はとにかく骨! 骨フェチなので、探す眼が骨に反応してしまう。

私の今までのコーミングで見つけた最大級はザトウクジラの12m。これが〝コーミング〟になるのかはさておき、とにかく大きかった。腐っても腐っていなくても持ち帰るのは無理で、クジラに付くクジラジラミとオニフジツボをゲットして帰った。

いつか見つけたいと思うものはいろいろある。マッコウクジラの結石(りゅうぜんこう)だ。かなり高価な値の付くものだ。マッコウの歯も拾ってみたい。とんでもなくデカイ。夢を語ればきりがないが、続けていればいつか見つかるのではないかと思っている。とにかく探さないことには何も手に入らないのだ。

流れものとしては流木もかなり魅力がある。過去にレンタカーのトラックを借りて椅子になりそうな切り株や形がアート的な木や枝などを集めたこともある。肉のついた魚やカニ、動物などは、拾うのはいいが処理が大変だ。肉を腐らせなければならないからだ。時間をかけられるのであれば土に埋めて2年くらい待つ。小さいものなら鍋に入れて煮込む。この煮込む作業が難点で、ものによってはとんでもなく臭くなる。しかも、いつも家で使っている鍋を使うもんだから奥さんにバレないようにコソコソとやることになる。今回は少し肉のついた、おそらくイルカの背骨らしきものを発見したので、これを標本にしてみた。

海に出かけた時はなんとなく気にして砂浜でも港でも探して歩くように心がけている。私の場合は生き物中心ではあるが、人工物でも何かわからないものや外国のものなどを集めてもかなり楽しい。寒い冬の暖かい日を選んで海辺を探してみてほしい。新しい趣味としてオススメの遊びだ。

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砂浜に散らばる海の落とし物 宝探しのように胸が高鳴る

静岡県で見つけたザトウクジラ9m。ヒレ(腕の骨)が欲しかったが、専用の道具がないととてもじゃないけど切り離せない。また、クジラなどは貴重なので科学博物館が押さえることが多い。

探す場所

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漁港

漁港のスロープや吹きだまりは捨てられた魚などが多く見つかるポイント。要らない魚種を海へ捨てるので、貴重なものが見つかることが多い。

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砂浜

場所にもよるが貝類が多く見つかる。また人工物も多く見つけられる。ゆっくり探しながら砂浜の散歩。気持ちがいいものだ。

拾ったもの

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砂浜で拾い集めたおそらくイルカの背骨。かなり風化していた。今回はこれを洗って標本にする。

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ウツボの仲間。骨だけだったが蛇のように長く、鋭い歯を持つ。肉がついていなかったので割と簡単に標本になった。

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トゲが抜けたバフンウニ。少し大粒の砂や貝がゴロゴロした場所に多い。ウニ類は何種類かあるので形で見比べる。

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砂浜で拾ったおそらくトラザメの卵。サメは卵生、卵胎生、胎生と種類で増えかたが違う。サメ全体では卵を産む種は少数。

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砂浜で見つけた「完璧だろ」と思わせるハリセンボン。多少の匂いがあったが、ポリデントに漬けて天日で干して標本が完成した。

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漁港で手に入れたスベスベマンジュウガニ。身が完全に干からびていて足がどこも欠けてない完全体は滅多に見つからない。

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まだ肉がたっぷりついているイルカ。非常にもったいないが腐敗がひどく持ち帰れなかった。歯を数本だけ抜いた。

イルカの
背骨標本を作る

 

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1.持ち帰った骨を、タワシなどを使って水でできるだけきれいにする。今回拾った骨は比較的きれいではあるが、椎間板が付いていてなかなか剥がれない。

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2.バケツなどにお湯を入れて、入れ歯洗浄剤を数個投入する。白くなるのと肉片やゴミを落とす効果がある。

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3.天日で数日間干す。動物やカラスに持っていかれないように注意する。雨が降りそうな時は雨の当たらないところへ移動する。

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4.標本にするには拾った年月日、場所、名前をラベルに記帳するとよい。いろんな背骨を並べても面白い。

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完成!

イルカの背骨標本完成。骨だけでも十分絵になるが、額などを使って展示すると見栄えがいい。せっかく集めて作ったのにしまってしまうのはもったいないので見せる飾り的に仕上げる。

標本コレクション

 

ここでは過去にビーチコーミングしたものを利用して製作した標本を紹介したい。ケースなどにもこだわってオシャレに作れば、部屋に飾るオブジェにもなる。

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タコノマクラ

浜で拾ったタコノマクラ。ウニやヒトデなどに近いタコノマクラ科。似た種類にスカシカシパンなどがいる。

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貝類

カメノテ、オオヘビガイ、アカフジツボを1作品におさめた。磯でよく拾える3種。

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ウニ類

葉山で見つけたウニの仲間。右からバフンウニ、ムラサキウニ、コシダカウニ。

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イルカンダ

沖縄の磯で見つけたつる性植物、イルカンダ。砂浜でよく見つかる。他にも沖縄方面では何種類か見つかる。

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ウミウ

砂浜で発見したウミウの頭骸骨。口ばしの形や大きさで判断する。オオミズナギドリやカモメなども見つかることがある。

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日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。