【vol.53】酷道371号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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酷道マニアも走りたくない?
紀伊半島を縦断する分断国道
大阪府河内長野市〜和歌山県東牟婁郡串本町

最近、カーナビの代わりに、スマホの地図アプリを使っている。情報がリアルタイムで更新され、地元の人しか知らないような最速ルートを教えてくれる。しかしその一方で、とんでもなく酷い道に誘い込まれることもある。騙された!という経験をした人も、少なくないだろう。

この日、私は大阪に来ていた。ずっと走りたかった酷道371号を走破するためだ。起点である大阪府河内長野市から国道371号に入り、終点の和歌山県串本町を目指す。紀伊半島を縦断する244キロの長い旅のはじまりだ。

起点からしばらくは普通の国道だが、橋本市を過ぎると、ようやく酷道となった。しかし、酷道区間は短く、物足りなさが残る。その後は高野龍神スカイラインとして、稜線に沿った気持ちのいい快走路が続く。

田辺市の竜神温泉を過ぎると、再び酷道がやってくる。朝から国道371号を走り続け、既に13時を過ぎていた。待ちわびた酷道だが、ここからは嫌になるぐらい、酷道を走らされることとなる。

酷道で南下を続けていると、ガードレールが消え、本格的な酷道となった。この時、私は後悔しはじめていた。実は、高野山付近でガソリンが半分を切り、給油しようと思っていた。しかし、タイミングを逃してしまい、そのまま走ってきたのだった。その後、営業しているスタンドを一度も見ていない。

田辺市木守に入ると “この先通行止”と書かれた看板が立っていた。そんなバカな……。スマホの地図アプリは、終点の串本町まで直進を指示している。ガソリンは残り僅か。このまま通行できれば串本町で給油できるが、本当に通行止だったら数時間の迂回を余儀なくされ、ガス欠は不可避だろう。時刻は18時を回り、暗くなってきた。

真っ暗になった酷道は、落石や倒木だらけで、パンクしないように慎重に避けつつ、時おり車を下りて障害物を撤去しながら進む。すると突然、激しいダートになった。

これはおかしいと思い、カーナビで確認してみると、なんと道が無かった。国道371号には未開通区間があり、今まさにそこにいたのだ。未開通区間は林道によって結ばれているが、カーナビでは通れないことになっている。地図アプリに騙されたのだ。しかし、ここで負けるわけにはいかない。

不安しかないなかで、給油ランプを灯しながら、暗闇の酷道を突き進む。激しいダートも、床下を打ち付けながら勢いで進むしかなかった。

その先で災害復旧工事が行われていた。通行止の3文字を見た時は、まるで人生が終わったかのような絶望感に打ちひしがれた。しかし、それでも絶対に負けられないのだ。

詳しくは書けないが、結果的には辛勝した。だが、もう二度と走りたくないと思った。ガソリンの余裕は心の余裕。酷道を走る際は、これでもかというぐらい早めの給油を心がけたい。自戒を込めて。

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追い込まれた状況で通行止の文字。まさに袋小路の状況だ。

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林道区間は路面状態が酷かったが、心に余裕がなく、スマホで撮ったこの1枚しか写真が残っていなかった。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/

1 個のコメント

  • 今月25日に串本の方から通りました。371号線は途中で途切れて平井林道を通りましたが、がけ崩れしまくりで路面全てに石が堆積しまくりで尖った石がたくさんあったからパンクを覚悟しましたよ。
    勾配の少しきつい所で30~40m位路面全てに石が堆積していたので降りて先を確認して強行しました。
    落ち葉と木の枝と石がたくさんで2度と通りたくなかったです。

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