国家が個人の命を守るのではない最後は自らの知恵と技術、道具が守る
昨今の異常気象により警戒レベル5にあたる「命を守るための最善の行動」という言葉を耳にするようになった。裏を返せば「最後は自分で自分を守れ」という宣言である。当たり前の話だ。実質的な命の責任も政治的な意味での主権も、すべては自身に備わる。自分自身で命を守る術を学びたい。
まずは現地調達で完結する応急テクニックを確認
サバイバル野営 BASICS
「○○年に1度の台風」とはよく言うが、いま海で起きている様々な異常を考えれば、これが一過性の現象でないことなど容易に想像できる。今後、日本は「地震および台風大国」となるのではないか。一方で、先の台風ではSNS上にこんな言葉も溢れていた。「家にはシェルターもシュラフもバーナーもある」「今アウトドアマンの旦那が万一の準備をしているから安心」等々。そうなのだ、わざわざ普段から外遊びに興じているアウトドアマンは、すでに防災の下地が整っている。ここでは改めて、外で過ごすために欠かせない行動を確認してみたい。
-ELEMENT.01- 外界から身を守る『住』
野外環境における生存に最も必要な技術
状況によっては何にも増して生存に必要となるのが、外界と自身を隔てるシェルターである。特に雨天など、そのままでは夏場でも低体温症に陥る環境では飲料水の確保より重要だ。ここでは手持ちの装備がナイフだけという状況を想定して、現地調達のシェルターを作る。
ブルーシートティピーの作り方
STEP.01
街でも探せば見つかるブルーシート。ここでは3.6×3.6mの正方形タイプを使った。まずは各辺に5つ備わるハトメの、隅から2番目のハトメを枝でペグダウンして内側へ折り返す(見た目は長方形になる)。
STEP.02
隅のハトメのペグダウン位置は、シートを開いた状態で隅から2番目にあるハトメの位置だ(写真左)。ここに目印を置き、隅のハトメを目印の位置まで持ってくると良い。
続いて折り返した辺の対向にある辺の、両隅のハトメを少し内側に寄せてペグダウンする。俯瞰から見下ろすと、長方形だったシートがテーパー状にすぼまるシルエットだ。
STEP.03
これで四隅をペグダウンできたので、あとは適当な長さの枝を使ってシートを下から持ち上げればピラミッド状になる。いわゆるワンポールテントと同じ構造で、それになりに広い居住空間ができる。
STEP.04
今回はササの茎を揉んでバラけさせ、節と節の間にできた隙間(ループ)に枝を差したトグル方式でハトメと連結した。反対側も節間の隙間に枝を通してペグダウンする。
これで四隅をペグダウンできたので、あとは適当な長さの枝を使ってシートを下から持ち上げればピラミッド状になる。いわゆるワンポールテントと同じ構造で、それになりに広い居住空間ができる。
-ELEMENT.02- 生命活動を維持する『水』
野外での営みに必要な生命維持要素を確保する技術
野外で生活していくとなると生理機能を維持するための飲料水が必要だ(健康維持には1日最低2ℓ)。現代的インフラが近くにない場合、泥水でも濾過し、消毒することで飲むことができる。ここでは焚火(別項で紹介)で作った炭を用いて濾過装置を作る。
フィールドで有効な浄水法
薬による消毒
煮沸消毒ができない場合、濾過では除去できない寄生虫や菌を市販のうがい薬、外傷消毒液、塩素系漂白剤などで除去できる(いずれもごく少量を使用。要知識)。
濾過
泥水など、様々な不純物が浮遊している水には濾過装置が有効である。その他、適当な容器に泥水を入れて12時間ほど放置し、不純物の沈殿を待っても良い。
熱による消毒
アウトドアマンにとって最も手軽かつ効果的な消毒法は煮沸。濾過した水を煮沸すれば、それなりに飲める水になる。標高にもよるが、5分ほど煮沸すれば十分だろう。
ペットボトル濾過装置の作り方
STEP.01
アンモニアや塩素などを吸着してくれる竹炭は、濾過装置の性能を大きく引き上げてくれるのでぜひ自作したい。かつて人が住んでいた場所には大抵竹林があるため、素材の入手性も悪くない。
ガス抜き穴を空けた蓋付きの缶にサイズを揃えた竹を入れて焚火にかける。チャークロスの製作法と同じく、ガス抜き穴からの煙が薄くなったら完成だ。
STEP.02
続いて濾過装置の筐体となる2ℓのペットボトルを加工する。ナイフでペットボトルの底面を切り取ったら本体に吊り下げ用の穴、キャップに水抜き用の穴をリーマーなどで空ける。
STEP.03
最後に下(キャップ側)から、小石、小砂利、砂、砕いた竹炭、細かい砂、布などの繊維を重ねて完成。小石~砂は濾過性能よりも水の流速を遅くするための仕掛けで、沈殿分離を促す効果が狙いだ。実質的な濾過機能は最上層の布や竹炭(けし炭でも可)が担う。
-ELEMENT.03- 人間生活を支える『火』
より快適な生活を支える人間の根幹技術
シェルター構築の第一目的である体温維持、飲料水確保の最重要作業となる消毒ともに、火を用いることで生活の精度は格段に向上する。ゆえに火を生み出す技術は野外生活において不可欠なのだ。ここでは現地調達の竹を使った火熾しを解説する。
現地調達物による火の熾し方
STEP.01
STEP.02
STEP.03
乾いた竹をナイフで半分に割り、片方にV字の切れ込みを入れて小さな穴を空ける。続いて竹内部に付いていた薄皮など、火口となるものを穴の内側からあてがう。最後にもう片方の竹を身体と立木で上向きに固定し、竹側面の凸部をレールに見立てて先ほど空けたV字の穴を沿わせる。この状態で思い切り前後にこすり合わせると、摩擦熱で内部の火口に火種ができる。