秋冬シーズンは焚火を思う存分楽しむのに最適な季節。
落ち枝も増えることを考えれば、ブッシュクラフトにも俄然精を出しやすくなるだろう。
唯一の難点、寒さについては、適切な道具と知識、発想があれば克服できる。
今こそ積極的に野営を試みるべし!
積極的にゆらめく炎の熱を抱き込む一手 焚火野営に導入したい TCタープの勧め
極端な話、積雪期であっても焚火を絶やさない工夫を施せば、寝具の強化次第でタープ泊は可能である。が、さすがに一般的な軽量タープでそれを実践するとなると火の粉による穴あきは必至。万が一の延焼を考えても、熱気をタープ内に留めておくような張り方は避けるべきである。そこで今回提案したいのが、昨今密かにラインナップを増やしているTCタープ(ポリエステル×コットンの混紡生地)によるタープ泊だ。多少重量は増すものの、火の粉に強いTCタープならアグレッシブなタープ設営が可能になる。
POINT
定番の設営法も発想次第で防寒力UP
スクエアタープの定番設営法となっているアディロンダック。コスパに優れたTCタープ2枚を手に入れて(ここで用いたタープは実勢8000円強)、これを向かい合わせに張ってみたらどうだろう? 特別な技術ではなく、発想で乗り越えたい。
夜間の焚火には安全かつ長時間燃焼する焚火型を
3つの丸太を重ねて中心部を燃焼させる焚火型「オールナイトファイヤー」は、空気が入りにくく、熱を留めやすい構造から小さな燃焼を長時間保持することができる。その名の通り、夜間に最適な焚火となるのでぜひ導入してほしい。
[TARP SHELTER1]SPLITED A-FRAME
一般的なAフレームを真っ二つに割り、間に排気用スリットを設けたのが「スプリテッドAフレーム」。一見複雑に見えるが、設営はスクエアタープ2枚を用いてアディロンダックを向かい合わせに配置するだけ。立木間にロープを2本渡せば、ポール類を一切使わずに風にも強い屈強な野営スペースが完成するのである。焚火の煙は積極的に逃しつつ、熱気はそのまま封じ込めておけるので、冬でもテント泊同等以上の快適な野営が楽しめる。
必要最小限の愛用品とともに鋭く澄んだ空気を愉しむ
居住スペースは大人2人が余裕で寝られるほど広大で、あたかもテント内に焚火があるような感覚だ。延焼防止策として石で囲った火床を中心に配置し、小さめの炎となるよう制御しておきたい。オールナイトファイヤー型の熱量でも十分に暖かい。
平常時はアディロンダックの特徴的な庇(ひさし)は後ろへ折り返しておく(設営強度には関係ないので細引きは石に巻いて止めておくと良い)。雨天時はこれを反対側へ折り込む形とすれば、瞬時に完全な屋根を形成できるのもポイントとなっている。
アディロンダック2張に必要な2本のロープは、太めの立木間に長めのロープ1本を往復させるだけで用意できる。木肌はフリクションがあるので、結びは始点~終点ともにノーノットで事足りる。煙の排気効率や気候により、2本のロープ間は細引きで狭めたり、枝をつっかえ棒にして広げたりしても良い。
〈PICK UP ITEM〉変幻自在に設営できる 焚火対応スクエアタープ
FIELDOOR
SQUARE TARP T/C [フィールドア・スクエアタープT/C]
問クローバー☎03-6432-9125
焚火などの火の粉で穴が開きにくく、難燃性と耐久性に優れたTC生地(ポリエステル糸65%とコットン糸35%の混紡)のコンパクトタープ。様々な設営を可能にする計16カ所のループベルト付き。8000円(税抜)
〈■ 使用時 280×280cm ■ 収納時 φ18×28cm ■ 重量 2.4kg〉
[TARP SHELTER2]A-FRAME
ファミリーキャンプなどによく用いられる大型のヘキサタープも、TC素材を用いたアイテムならよりアグレッシブな張り方が可能だ。例えばレクタタープの定番設営法と言える「Aフレーム」を大型ヘキサタープに置き換えれば巨大な庇(ひさし)ができる。この下に焚火を据えるだけで、多少の雨なら鎮火せず、熱気を積極的に取り込める有効な野営スペースが出来上がるのだ。“家族用”を口実に手に入れて、ソロでも活用するべし。
定番のヘキサシェイプを活かす最も手軽な設営法
ファミリーキャンプアイテムならではのサイズ感だからこそ、居住スペースが最低限となりがちなAフレーム型でも、大人3人が並んで寝られる余裕のスペースを確保できる。
ここでは焚火の煙が効率良く抜けるようルーフを地面と平行に設置しているが、外気温により、焚火とは逆側の庇(ひさし)をペグダウンして熱気を留めておいても良い。
TC素材は火の粉に強いこと以外にも、日光の遮蔽率が高いという特徴を持っている。当然夏場は涼しい野営スペース構築にも役立つので、一年を通して使えるだろう。
〈PICK UP ITEM〉厚手生地を使用した安心のヘキサデザイン
DOD
ALL RIGHT TARP [ディーオーディー・ヘキサタープ]
問ビーズ☎050-5305-9905
火の粉で穴が開きにくいポリコットン生地を使用したヘキサタープ。厚みがあるため濃い影を作り出し夏場は快適。6箇所の角にポールとグロメットが付けられるため、シーンに合わせた変形も可能。オープン価格。
〈■ 使用時 420×420cm ■ 収納時 55×14×14cm ■ 重量 3.0kg〉
[TARP SHELTER3]C FLY ROOF
通常は広い居住スペースの確保に役立つレクタタープだが、ソロでの使用ならそれを、焚火を囲い込むようなウォール構築に役立てることができる。ここで用いている「Cフライルーフ」は、レクタ型の長辺をグランドシート~ウォール~ルーフに割り当てた設営法で、風向きを利用すれば焚火との相性も抜群。火の粉に強いTCタープなら、夜間はルーフを地面へ向けて傾斜させる「Cフライウェッジ」に変形させ、さらに熱気を囲い込んでも良いだろう。
設営法がマンネリになりがちなレクタタープを最大限に活かす方法法
「Cフライルーフ」の魅力は、タープならではの開放感はそのまま、グランドシートを備える快適な居住スペースを確保できること。厚めのスリーピングマットと合わせて快眠できる。
ここではタープをグランドシートとしても活用しているが、屈強なコットンが混紡されるTCタープは一般的な化繊タープと比べてハードに扱えるのもメリットとなるだろう。
ウォール部の傾斜は強い方が耐候性に優れる。居住スペースが狭くなってしまう点は、タープに小石を挟み、反対側からクローブヒッチで括って引っ張り上げれば解消できる。
〈PICK UP ITEM〉撥水仕様のポリコットンで 様々な野営環境に対応
EVERNEW
TARP TC4 [エバーニュー・タープ TC4]
問エバニュー☎03-3649-3135
コットンとポリエステルをバランスよく組み合わせた使いやすい長方形タープ。表面は撥水加工済みで、焚火等の熱にも強い。ポリコットン系タープの中では薄手の生地となり、ナイロン系に迫る軽量性も魅力。2万円(税抜)
〈■ 使用時 285×400cm ■ 収納時 [NO DATA] ■ 重量 1.8kg〉