【vol.44】第12回 伝統保存食入門

ラー油(辣油)

今回は「ラー油(辣油)」がテーマ。唐辛子の辛さとフレーバーを付けただけのシンプルなものではなく、いわゆる「食べるラー油」系の具がたっぷり入った複雑な味のラー油だ。使う材料と量の配分で、味にかなりの差が出る。オリジナルレシピ作りを楽しんで欲しい。

マイオリジナルレシピの 追求を楽しんで欲しい

「食べるラー油」ブームも一段落してしばらく経つが、このブームのきっかけとなったのが、沖縄の石垣島はペンギン食堂の「石垣島ラー油(通称、石ラー)」だ。その後、数多くのメーカーがこの製品のマネをして、やがては自然淘汰されていったのだが、結局「石ラー」を超えるものは出なかったんじゃないかと僕は思っている。結局、ちょっとマネをしたくらいじゃダメで「オリジナルの持つ力をなめんなよ!」ということか。アウトドア用品にも同じことが言えるのではないだろうか。

ラー油(辣油)は現在、店で買ってくるのが普通だが、昔の中国では家で作るもので、日本の味噌汁のように各家庭にそれぞれのレシピがあり「うちのが一番」というものであったらしい。作るのも決して難しくはない。様々な作り方があるが、僕のは昔通っていた中国家庭料理店の姉妹に教わったものがベースだ。個人でやっている中国料理店や沖縄料理店ではオリジナルのラー油を出しているところも少なくないので探してみるのもいいだろう。東京有楽町にある沖縄料理店「いいあんべぇ」もそのひとつだ。

調味料が良ければ、食材や調理法はシンプルなほど良く、様々なものにも応用が効き、その結果、簡単にうまいものが食べられる。ラー油も複雑系良し、シンプル系良し。あなた好みの味を追求してみてほしい。

【材料】ゴマ油400cc、七味唐辛子40g、花椒(ファージャオ)20g、ニンニク3個、青ネギ1束、干しエビ25g、干しホタテ25g、干しシイタケ15g、松の実25g、カシューナッツ25g、砂糖大さじ1

【作り方】❶ニンニクと青ネギを細かなみじん切りにする。❷水分を飛ばすためにニンニクを弱火でじっくり炒め、最後に青ネギを加えて軽く炒める。ネギは決して焦がさないこと。❸干しエビ、干しホタテ、干しシイタケ、松の実、カシューナッツをニンニクと同程度の細かさのみじん切りにする。❹七味唐辛子(辛いのが苦手な人は半量の20g)、挽いて粉にした花椒、②、③、砂糖を鍋に入れて混ぜ合わせる。今回はグラニュー糖を使っているが、粉末の黒糖にするのもいいだろう。❺別鍋でゴマ油を煙が上がる寸前まで熱する。今回の調理ではここが一番気を使うシーンとなる。熱し過ぎの火災や火傷にはくれぐれも注意のこと。❻熱したゴマ油を④の鍋に注ぐ。一気に注ぐと吹きこぼれるので2~3回に分けて注ぐこと。❼冷めてから、煮沸消毒しておいた保存瓶に移す。❽3日ほどおいて味が馴染んだら完成。

香ばしくなるもの、深い香りの出るものの種類を多くするほど美味しくなる。干しホタテは高価だが、是非入れたい。元々、中華系の調味料なので、スーパーの中華食材コーナーに行くと、ほぼ一通り揃うハズ。

具材はすべて細かなみじん切りにする。フードプロセッサーやフードミルを使えば時間はかからないが、本誌読者ならばナイフで、食材の硬さを楽しみながら作業したい。

ニンニクと青ネギは水分を飛ばすためにあらかじめ炒めておく。じっくりとニンニクを炒めた後で、長ネギを投入。長ネギは苦味が出るので、決して焦がさないこと。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。