【vol.40】酷道433号

ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

山あり海あり落石あり表情豊かな酷道「酷道433号」
広島県三次市〜広島県廿日市市

国道433号は、広島県内で完結する実延長100キロほどの比較的短い国道だ。ここに行くため、前夜に岐阜でレンタカーを借りたのだが、ちょっとした事件が発生する。予約していたコンパクトカーが用意できなくなったとのことで、サービスでランクアップされていたのだ。

「プリウスでご用意させていただきました!」と自慢げに言われると、「それ、酷道に一番向いてない車や」とも言えず、喜ぶフリをすることしかできなかった。不向きな車で挑むのもまた、酷道の楽しみの一つである。

翌朝、広島県三次市に到着。江川に沿って、国道375号との併設区間を走る。対岸には、この春廃線になったばかりの三江線が見える。左折して375号と別れると、酷道らしい雰囲気が漂ってきた。
集落を抜けると、いきなり車線が極端に狭くなった。プリウスでギリギリの道幅しかない。これは、テンションが上がる。

ここから山間部に突入すると、路面状態も酷くなった。アスファルトが剥がれて陥没していたり、落ち葉が路面を覆い隠したりしている。

また、プリウスならではのイベントも度々発生した。路面に転がっている落石や木の枝など、ちょっとした大きさでも引っかけてしまう可能性が高い。レンタカーで無理が出来ないという事情もあって、度々車を降りては障害物を撤去する羽目になった。しかし、落石を除ける作業は、酷道探索の醍醐味であり、本当に楽しいものだ。

この酷道433号は、道の酷さもさることながら、表情がとても豊かだ。峠は石積の立派な切通しになっていたり、路面を緑の葉っぱが覆い尽くしていたり、絵に描いたようなヘアピンカーブがあったりする。何時間も走り続けているというのに、全く飽きを感じさせない。

地形が開けるとセンターラインが現れ、山に入るとまた酷くなる。このパターンを何度も繰り返しながら、徐々に西へ向かう。交通量はほとんどなく、ゴールデンウィークの喧騒が嘘のようだ。

加計付近で左折し、ここからは南下する。国道191号、488号との併設区間を通過するが、2車線の快走路が続く。

このままゴールかと思ったが、最後のお楽しみ・七曲峠が待っていた。道幅は狭いが、路面は綺麗だった。峠からは、瀬戸内海も見える。海のない岐阜県民としては、盛り上がらざるを得ない光景だ。

そして、交通量が極端に多くなった。七曲峠の手前までは、温泉施設へのアクセス路となっており、次々に対向車がやって来る。向こうも、まさか対向車がいるとは思っていないようで、猛スピードで突っ込んでくる。最後にして、なかなかの難関だ。

早朝から4時間かけて100キロほどを走ってきた。たいした距離ではないが、体感的にはとても長い道のりだった。長いけど飽きない。そんな素敵な酷道だった。

マリオカートに出てきそうなヘアピンカーブ。

崩れたばかりの新鮮な石が転がっていた。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。徐々に仲間を増やしながら活動を続けている。
http://www.geocities.jp/teamkokudo/