【vol.27】MSR/OGAWA/Helinox

今号でも紹介している話題の探検ノンフィクション「外道クライマー」によると、例え上流に動物の死骸があっても、沢ヤは余裕でその川の水を飲むらしい。ベア・グリルスのアドバイスも彼らには関係ないようだ。しかし、できることならクリーンな水が飲みたい。

Photo/Toshiaki Furihata Text/Fielder

「結局使わない」を回避できる最先端機構

大枚を叩いて購入した浄水器にありがちな話が、そこら辺の水たまりから取水しているうちにフィルターが詰まり、喉を潤すほどの水が摂取できないという事態。スペック表を見るとフィルター寿命は数千リットルと記載されているのに、実際のところ、その寿命はあまりにも短いのだ。「最大○○L」と書いてあるから文句は言えないが、その最大って清らかな渓流から取水した場合じゃあないかと勘ぐってしまう。そもそも浄水器が必要な場面というのは大抵沢筋から離れた場所での野活時。岩場に溜まった雨水や山頂湿地の池塘で、その効果を最大限に発揮できなければ意味がないのだ。「そんなこんなで結局使わなくなっちゃったよ」という話を時々聞いてきたため、浄水器はブルジョワジーの贅沢品だと感じていた。

が、今度のMSRはかなり良い。「米陸軍との共同開発」という響きもさることながら、浄水器最大の弱点である目詰まりをポンピングごとに自ら解消するというのである。その原理はシンプルで、中空糸膜でろ過された水の10%を常に逆流させ、フィルターの目に入り込んだ異物を押し流すというもの。逆流した水は別系統のホースで排出される。セルフクリーニングシステム(特許出願中)という発想自体がこれまでにないものなので、確実にその効果はあるはずだ。これさえ手に入れれば、行動範囲が広がること間違いなしだ。

※商品情報は本誌発売当時(2016年4月)のものです。

MSR GUARDIAN

[エムエスアール・ガーディアン]

米軍との共同開発により生まれたこの浄水器は、中空糸膜でろ過された水の10%を逆戻りさせ、ポンピングするたびにフィルターを自動的に清掃する画期的なシステムを搭載。タフな環境下でもフィルターの目詰まりが起こりにくく、快適に使える。
5万6000円(税抜)

川などの水面から水を汲み上げるためのフロートを備える取水部。プレフィルターにつながる取水用ホースとは別に、セルフクリーン機構に使われる水を排出するドレンがある。

1分間に30〜35ストロークの操作が理想となる同洗浄機。軍用前提に開発されただけに、ハンドル部はガタもなく屈強で浄水操作も苦にならないだろう。

浄水後のきれいな水が排出されるポート側面にはネジが切ってあり、水筒やハイドレーションパックに直接取り付けることもできる。

フィルターには中空糸膜テクノロジーを採用。汚れの混じった水が中空糸膜の中を通ると病原菌や汚れが取り除かれる。セルフクリーンシステムと相まって、寿命は10000L、1分間で2.5Lの流量を誇る。