【vol.33】ボウズハゼをいただきま~す

今回のテーマ:ボウズハゼをいただきま~す

ウナギがダメならウナギに変わる魚を探そうと、色々試した結果ナマズにギバチ、ドジョウそして今回のテーマボウズハゼが蒲焼に向いていた。ボウズハゼで蒲焼に挑戦してみた。

野外で食べられるものは、できる限り自分で捕まえて料理して食べている。特に魚は得意のジャンルでもある。フィールドに出ると色々なものを発見することができ、その度に勉強になり経験値が上がり、何より楽しい。今回は「蒲焼に挑戦!」なのだが、蒲焼と言えば、ウナギが定番中の定番だ。

しかし、ここ数年、ウナギは激減していて、日本中で守る意味も込めて捕まえることを自粛している。実際、川で遊んでいても確かに前ほど見つからない。数年前には、ウナギ捕まえてきまーすと言って家を出れば、必ず数匹は持ち帰ることができたのに…。とても残念だ。というわけで、今回は蒲焼に向く魚「ボウズハゼ」を捕まえることにした。

ボウズハゼ?って思うかもしれない。釣り魚ではないし、観賞魚でもなく知らない人は多いと思う。この魚はハゼの仲間で、石に着くコケを食べている。大きさもあまり大きいわけでもないので、食卓にも上がらない。関東より南の暖かい地方にいる魚だ。基本的に、淡水にいるハゼ類やエビ類は赤ちゃんが育つために海が必要で、卵から生まれた子供は海に下りて育ち、川を遡上しながらさらに育つ。そのため、探すときには、どこの川でもいいというわけではなく、川から海まで障害物の無い川を選ぶ。ある程度綺麗な川であれば大小は関係なく、小さな川でも見つかる。ポイントは石がゴロゴロしている川だ。石についている苔を食べる魚で、胸ビレの吸盤力は強く、強い流れでも流されないよう石に張り付くことができる。縄張りを持つ魚で、餌では釣れないが、鮎のように友釣りなら釣ることができる。普段は石の上に顔を出しているが、驚くと石の下に隠れてしまう。泳いで逃げるタイプではないので、石をどかしながら探す。流れの速い川では探る石の下に網を構え、上流側から石を足でどかして、流されるように網へ入ってもらう。

水が温む真夏は、箱メガネや水中マスクなどで、潜りながら採るのもいいだろう。ぬぼ~とした姿は、ボウズハゼという名前がぴったりな魚だ。

蒲焼はタレで食べる感があるが、どんな魚でも合うわけではない。不向きなものもあるのだ。なんとなくぬるぬるした魚で、鱗を取らないで皮ごと料理できるものがいい。ボウズハゼは小さくて下ろすのが大変だが、蒲焼にはぴったり。欲を言えばもっと大きく成長して欲しいくらいだ。川魚のほとんどが、やや泥臭い匂いがあり好き嫌いの好みはあるが、水の綺麗な場所にいる魚には川臭さがないものもいる。色々な川で、色々な魚で試してみないとわからないことだ。日本中で色々な魚を食べてきているが、このボウズハゼはオススメできる魚だ。

料理するコツは、やはり小さな魚で下ろすのが細かな作業になってしまうが、慌てず丁寧に下ろせば、さほど面倒ではない。今回タレはウナギ用のタレを購入したが、自家製タレを作るのも楽しみの一つだ。タレなどをつけた魚で1番難しいところは、焼き加減だ。焦がさないことを心がけ、様子を見ながら焼いていく。味は文句ないが、もっとたくさん食べたくなる。自分で捕まえたものを料理して食べることは、多少味が悪くても楽しく食べられるものだ。色々な魚で様々な料理に挑戦してもらいたい。

太平洋側の関東より南、西に生息する淡水魚。大きくてもせいぜい20cm前後。苔を食べるハゼの仲間。虫を食べないので、釣りで釣ることはできず、網で取るしか方法はない。

川に入り込むので、今回は胸まである長靴、ウェーダーを用意する。川の石は滑るので滑りにくいフエルト素材のソールの物を選ぶ。網はかまぼこ型の物。特に肢は伸びなくてもいい。持ち帰り用にバケツも用意する。

蒲焼きに向く魚

ドジョウ

山間部の池や沼にいる大きなドジョウ。日本中に分布する。小さなドジョウでもいいがさばくのが大変なので、できるだけ大きなドジョウを選ぶ。

ギバチ

関東より北に分布するナマズの仲間。関東より西、南には似た魚でギギという魚がいる。大きくても30cmほど。ナマズが泥の魚なら、ギバチは石の魚だ。

ナマズ

最近ではウナギに変わり、蒲焼はナマズになりつつある。淡白で食べ応えもあり美味しい。自分で捕まえて料理するなら、匂いを消すために泥吐きをさせる。

採り方

人の気配を感じると警戒し、石の下に入り込むので、隠れている石の下流側に網を構え、隠れている石を足などでどかす。魚の方から逃げて網に入る方法。流れが強いほど入りやすくなる。

ボウズハゼはハゼ科の魚で、胸ビレが吸盤のようになっている。ハゼの中でも最も強い吸盤力で、滝壺のような垂直の岩も登る。河口から最上流まで分布する理由がわかる。

料理

1.ぬめりがすごいので軽くぬめりを取り除く。

2.串で目打ちをして、まな板に固定する。魚が動かず作業がしやすい。頭の方から背中を開く。

3.頭の方から背中側に包丁を軽く何度か入れて徐々に開く。背骨ギリギリ上を包丁が背骨に触れているのを確認しながらしっぽまで進む。

4.開いた身に竹串をバランスよく丁寧に刺す。小さい身なので慎重に進める。

5.本来身と皮の間に串を打つが身の厚みがあまりないので、皮に打つ。

6.タレをつけ、弱火でじっくり焼いていく。焼きながらタレに何度かつける。皮に薄く焦げ目がつくような焼き加減が最高。

温かいご飯の上に乗せて完成。文句のない味だが、もっと捕まえてくればよかったと反省している。蒲焼は多少面倒だが、完成と味には変えられない。満足な逸品だ。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。