【vol.31】ヒイカをいただきます

今回のテーマ:ヒイカをいただきます

毎年この時期になると、友人と耐寒訓練をする。耐寒訓練と称しての釣りを楽しんでいるのだが、かれこれ20年近くも続いている。寒いのが苦手な私だが、何かを捕まえるとなると不思議と寒さが気にならなくなる。今までに色々と捕まえてきはいるのだが、今回は初めての獲物だ。狙うのはこの時期に漁港などに群れで現れるジンドウイカ(ヒイカ)だ。夜になると漁港などの明かりにさそわれて群れで現れるらしい。そのせいなのか、この時期にこのヒイカを狙っている人は漁港の明かりの周辺に多い。今回は耐寒訓練を一緒にやっている友人の誘いで、名古屋港まで出かけた。実際には日本中でヒイカは見られているようで、真冬の釣りのターゲットになっている。大きさはかなり小さいが、身が柔らかく、とても美味しい。

まずは、前日に餌取りだ!友人に餌を尋ねると、釣具屋さんでは川に生息しているスジエビを出してくるよ。とと言うので、それならば普通に捕まえられるエビなので、近所の川でガサガサをしてきた。しかし、海の魚が淡水のエビを食うなんて。なんでもいいんじゃないのかな?と思う。捕まえたエビは殺さないように電池式エアーレーションで生かしておく。この釣りは、夜釣りだ。潮や場所で釣れる時間帯が様々なのだが、友人の情報では名古屋港では19時前後の2時間が狙い目だと言うことだ。初めて狙う獲物は不安とドキドキでなんだか初心にもどれて楽しい。二人で現場の漁港へ少し早い17時に到着。簡単な仕掛けなので、すぐに竿を出し、釣りがスタート。

気温は氷点下までは下がってはいないようだが、ジッとしてあたりを待つ釣りは、かなり堪えがたい。足踏みをしたり、意味もなく走り出したり。釣れだすと群れでいるので連続して掛かるらしいのだが、一匹ずつでいいのでちょいちょい釣れてほしいところだ。竿を出してからもう2時間。釣れない釣りはいつでもそうなのだが、とても不安だ。何にもいないプールに竿を出しているような感覚に落ち入る。周りで釣りをしている人を覗きに行くと、同じように釣れていない。不安だ!このまま朝になるんじゃないだろうか。

そんな時、友人の浮きが引いた。イカは針に返しがないので、常に引っ張り気味で釣り上げるのがコツ。途中で糸を緩めると、バラしてしまうのだ。私も友人も竿を2本ずつ出しているが、友達の2本の竿に立て続けに釣れた。「よーし群れが来たぞ!」と友達。ところが、友達の竿には何匹も釣れているのに、すぐ隣で竿を出している私にはアタリすらない。おかしすぎる。仕掛けを比べて違うところを確認すると、タナ(深さ)が明らかに違っていた。すぐに同じ深さに切り替えると、待望の一匹をゲット。釣り初めからなんと2時間20分。ようやく釣れたのだ。やれやれ。この後、怒涛のごとく釣れ出して、みるみるバケツがいっぱいになった。こりゃ大変なことになるぞと先を考えたのもつかの間。ピタッとタリがなくなり、また釣れない時間が続いた。

大漁と思っていた釣果も私は10匹程度で友人はその倍以上釣っていた。結局その後のアタリはなく、21時まで竿を出していたが、終了。耐寒訓練というよりは釣れない忍耐訓練のようだった。

冬に群れで漁港などに現れるジンドウイカ。あだ名はヒイカ。大きさは大きくても20cm程度。冬の釣りのターゲットとしてひそかなブームの波が来ている。柔らかく、いろいろな料理に利用できる。

耐寒訓練とはいえ服装は寒くないように備える。釣りは特に寒いとやる気が失せるし釣れる気もしなくなってくるので首、指など露出しているところも隠すように防寒。

釣る

エサ採り

ヒイカ釣りでは川エビを使うらしいので、川へ餌採り。少し深い草の茂った中に網を入れて探る。冬は群れでいるのでいい場所に当たると大漁に採れる。

仕掛け

小さなイカ用の仕掛けを用意。何種類かあるので釣り具屋さんに聞くといい。イカは口に掛かかるのではなく、返しのない無数の針に引っ掛けて釣る。

釣りスタート

少し気が早いが、日没と同時に釣り始めた。この釣りはイカ専用の仕掛けなので、イカ以外が掛かることがなく、外道がいないだけに寂しい釣りになる。最初の1時間は釣る気マンマン。しかし、段々と気合も冷め寒さが身にしみるようになった。どうなるのかこの釣りは!

寒い中、2時間辛抱した甲斐があった!やっと釣れたのだ。小さいながらもグイグイと引っ張る感触はとても楽しい。群れが来たのかわずかな時間で10匹ほど釣れたがしかし、この後。全く当たりもなく止む無く終了。

料理

二人で釣り上げたヒイカ。この中の10匹が私の釣果。刺身でも食べられるが、今回はひとくちサイズのイカめしに挑戦。

1.鍋に水を入れ沸騰したら、火を止めてヒイカを入れる。火を止めるのは硬くなるから。そのまま5分放置し、ザルにあけてさます。

2.胴体と足部に分ける。胴体の内臓や墨を取り除き、中骨を引っ張って抜く。足部の目と口は食べた時に硬さがあるので取り除く。

3.本来はもち米を使うのだが、時間短縮のためコンビニで売っている赤飯のおにぎりを利用する。小豆とごま塩がなかなかいい隠し味になる。

4.イカの胴の7分目くらいに赤飯を軽く押し付けるように入れる。このあと煮込んでいくと赤飯が膨らむので入れすぎると破裂する。

5.胴体に下処理の済んだ足を差し込み、抜けないように楊子で丁寧に止める。イカの長い足2本は触腕でこの2本で獲物を掴む。

6.フライパンに、醤油・酒・みりん・砂糖すべてスプーン大さじ2杯・生姜少々・水150ccをフライパンに入れ沸騰したらイカを入れる。

7.中火で5分加熱、裏返してさらに5分加熱。コロコロとイカを転がして味がしみたら完成。ひとくちサイズのイカめしの完成。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。