【vol.36】CUSTOM KNIFE MAKER/WORKMAN/NAKATA SHOTEN

今年も狩猟シーズンが到来し、“獲って食う”を実践する野生派アウトドアマンの本番を迎える。となれば、獲物の解体に欠かせないナイフの出番も必然的に増えることだろう。というわけで、ここでは2016年末の服部文祥によるカスタムナイフインプレッション特集で誕生した“鹿解体用の小さなナイフ”に本人の5段階評価を添えて(服部自身は「どのナイフにも個性があり、低い点はつけにくい」と悩んでいたが)今一度クローズアップ。今こそ日本有数の実力派カスタムナイフメーカーが手がけた逸品を手に入れるチャンスだ。

Photo/Toshiaki Furihata Text/Fielder

CUSTOM KNIFE MAKER CUSTOM HUNTING KNIFE

[カスタムナイフメーカー・カスタムハンティングナイフ]

本来、商品価値はそれに費やされた労働力によって決まるもので、宣伝費で勝ち取った架空のブランド力に左右されるものではない……はずなのだが、有名無実な金持ちより無名有実な働き者が苦労している現状を見ると、今の経済に重要なのは家系の力や人を騙す力であることがわかる。当然、そんな環境にどっぷり浸かって生まれた商品を信用するなんてバカらしい(実力で確固たるブランド力を築いた商品は除く)。

その点、カスタムナイフというのは物質文明に侵略された絶滅危惧種のように希な存在で、ナイフ1本に費やされる思考・技術・作業量がしっかりと評価される。つまりは買い手の質も高く、作り手は宣伝などに時間を割くことなく制作に没頭できる。結果、信用に足る商品が永続的に生まれるのだ。もちろん、日々の軽作業にはファクトリー製の手軽なクラフトナイフを使うのもありだが、生命をとめる重作業には、作り手の魂がこもったカスタムナイフを使うのが本筋だろう。

ちなみに、過去の特集で誕生したこれら“鹿解体用の小さなナイフ”は、カスタムナイフの魅力をより多くのアウトドアマンに知ってもらうために“購入しやすい価格で”という条件も付けられている。10万円弱が相場の実用カスタムナイフにおいて、この価格はお値打ちと言えるだろう。例えるなら、大の大人がそれだけに数ヶ月を費やして掘り起こしてきたダイヤモンド1粒を、工場で形成・研磨されたガラス玉2〜3個分の価値で買えるチャンスである。

※商品情報は本誌発売当時(2017年10月)のものです。

相田義人 LITTLE CAPER

[リトルケーパー]

川魚から大型動物まで、現場での処理に使える最小限のナイフとして生まれた逸品。刃渡りに対して長めに作られたハンドルは4本指がしっかりと収まるほか、薬指がかかる部位をわずかに隆起させることで抜群のグリップ感を生んでいる。ベルトループにもかけられる小ぶりなシースも現場での使い勝手に貢献する。参考作品

ブレードハンドリング★★★★★
グリップパフォーマンス★★★★☆
ポータビリティ★★★★★

中根祥文 3 1/2” HUNTER H

[3.5インチ ハンター H]

鹿を吊るして解体する服部のスタイルに合わせて刃長を105mmに設定。ホローグラインドで極限まで薄く削り込まれたブレードは鋭い切れ味を発揮しつつ、キック部にU字の切り欠きを設けて素早い刃研ぎも実現している。ハンドルのファスナーボルトはグリップの補助として紐などを通せるよう中空とした。3万2000円(税抜)

ブレードハンドリング★★★★☆
グリップパフォーマンス★★★★★
ポータビリティ★★★☆☆

奈良定 守 FIELDER MINI

[フィールダーミニ]

最小クラスの鹿解体用ナイフを実現しつつ、しっかり削り込まれたヒルト部や丸みを帯びたハンドルの造形、ストラップに備わるストッパーで、小ささを感じさせない手馴染みを提案。ポイントからキックに渡って緩やかなアールを描くスキナーブレードはエッジが長く、コンパクトモデルながら獲物への食いつきも良い。2万5000円(税抜)

ブレードハンドリング★★★★☆
グリップパフォーマンス★★★★★
ポータビリティ★★★★★