【vol.35】タニシをいただきま~す

今回のテーマ:タニシをいただきま~す

今回はどこの田んぼでも見つかるタニシを食べた。実は田舎が長野県で、小さいころ田舎に行くとこのタニシが味噌汁の中に入っていて、なんだか美味しくなかった覚えがあった。それ以来、自分でどうこうしようなんて考えたこともなかったのだが、こんなにいるのに食べない手はないなと思い挑戦することにした。

これから秋が深まると稲に必要な水がいらなくなり、水路の水をシャットアウトする。田んぼに水を送ることをやめるのだ。田んぼやその周辺の水路の生き物は水がなくなることで、生きていけなくなり、逃げたり干からびて死んでしまったりするわけなのだが、田んぼで暮らす生き物は少し違う。タニシやザリガニ、ドジョウは水が干からびてもちゃんと次の年には顔を出す。不思議でしょ。これは田んぼを上手く利用した生き方で、水がなくなると土に潜り湿ったところで来年の春まで越冬する生き方をするのだ。同じ生き物でも水のある場所では、特に越冬するわけでもなく生息している。長い歴史の中で田んぼで生きる方法を身につけたのだろうか? とても不思議である。春になり田んぼに水が入ると潜っていた生き物は顔を出し、田んぼで動き出す。

タニシと言っても種類は多く、一般的によく見かけるタニシは、オオタニシ・マルタニシ・ヒメタニシなどがいる。貝の形が微妙に違い小さな個体だとなかなか判別できない。どのタニシも味も変わらず、食べることはできるので、目についたタニシを捕まえ一緒に食べる。今回のタニシ採りは、田んぼの水を止めた直後を狙い、採集してきた。水の無くなった水路では、拾ってくれとばかりにタニシがゴロゴロとしている。取りすぎ注意と言ったところだ。できれば多く捕まえて、料理にアレンジを加え色々な食べ方で挑戦して、これだ!というものを見つけて欲しい。日本中でこのタニシは食べられているが、まだ美味しいと思った食べ方に出会ったことがない。

田んぼは、人間がお米を作るためもので、特に生き物のために作ったものではないが、そこに住む生き物も多く、覗いて見るだけでも楽しいものだ。田んぼと一言でいっても様々なタイプがある。例えば水路。田んぼに水を流す水路は、素掘りの溝だったものが、効率がいいようにコンクリートで固められて、手間がかからないようになった。今でも素掘りの水路はあるが、ほとんどがコンクリートの水路になっている。こうなると生き物は激減し、生き物の豊かな田んぼとは言えなくなる。最近では、生き物のいる田んぼを取り戻そうと、昔のようなお米つくりが見直されてきている。

田んぼは、人の手で作られたものだが、そこに生き物が居ついていることがとてもすごいことだと思う。里山でもなんでもそうだが、生き物の多くはそういった人の作った場所でも共存するような形で、生き続けている。もし、人がさらに便利を追求し、今の生態系をガラッと変えたら生き物はついてこれるのだろうか? おそらくついてはこられないと思うが、田んぼでも、畑でも山でも、大きく変えることは自然界にとって大変危険な出来事につながるのだ。技術や研究が進むのはとてもいいが、自然のことも考えて進んで欲しい。

タニシは全国の田んぼに分布するが、形や大きさで種類が違い、まとめてタニシと呼んでいる。タニシを食べている地方も多く、今でもスーパーに並ぶ。

水の無くなっている田んぼであればどんな装備でもかまわない。網とバケツを用意する。夢中で拾うと採り過ぎてしまうので注意する。

タニシ図鑑

左からオオタニシ・マルタニシ・ヒメタニシ・カワニナ。ほぼ同じ場所に分布するが、カワニナは田んぼというよりは、流れのある川に生息する。

田んぼ水路

夏の終わりに稲穂が垂れ下がり田んぼが黄金色になる頃、稲に水が必要なくなるため水路の水を止める。

水を止めた水路には、しばらく水が枯れるまで、水路に住んでいた生き物が残され、それを目当てに動物や鳥などが現れる。当然、人も獲物を採りにやってくる。

コンクリートだと

最近になって加速するように増えてきたコンクリートの水路。素掘りの水路より手間がかからず、便利。

コンクリートの水路でかろうじて沈殿した泥に残ったタニシ。素掘りの田んぼであれば潜って助かるのだが、この水路では干上がり死んでしまう。

料理

1.たくさん採れたタニシの中から形のいいものを選別。綺麗に洗う。

3.身だけにしたタニシを綺麗に洗う。貝ぶたは取りにくいのでつけたまま料理する。

2.貝を割り、身だけを出す。タニシにはオスメスがあり、メスの中からは小さなタニシが出てくることがある。

4.鍋に白味噌とお酒少々、みりん・水を入れ煮立てる。焦げ付かないように煮込んで出来上がり。

下ごしらえに多少の手間はかかるが、料理自体は非常に楽にできる。味はまずまず。これにアレンジでニラや万能ネギを入れても美味そうだ。不味くはないので、挑戦してもらいたい。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。