【vol.38】第6回 伝統保存食入門

アーサの佃煮

この時期沖縄に行ったら、是非チャレンジしてもらいたいのが、浜辺での「アーサ拾い」だ。難しいことはいっさいない。ただ、納得できる量を採るためには、かなり長時間しゃがんで作業するのを覚悟のこと。

春の海のめぐみを一足先にいただく

沖縄の春は本州よりも1ヶ月以上早く訪れ、1月中旬から3月にかけて、大潮の日の干潮時には浜が一面明るいグリーンに彩られる。沖縄では「アーサ」と呼ばれるアオサ(ヒトエグサ)である。浜ではオバアや子供たちの「アーサ拾い」があちこちで見られ、春の風物詩となっている。アーサは、そのまま塩やポン酢をかけて食べてもおいしいし、沖縄ソバにトッピングとして加えると激ウマだ。今回はそのアーサをしばらく味わっていたくて佃煮にした。海苔の佃煮のように、ご飯に乗せて食べても、酒の肴にしてもウマイ。
 
本州ではアオサの時期は5月ころで、千葉の三番瀬でも浜が一面アオサで覆われる。しかし、東京湾の海水で作った塩を食べたくないのと同様に、東京湾のアオサは僕も遠慮したい。昔は海苔の養殖もしていたというのに。三番瀬のアオサも発酵飼料として使われているだけで食用にはされていないのが現状だ。海の汚れを真っ先に受け取ってしまうのが、こういうシンプルなものたちなのである。また、養殖場の海面にフタをしてしまう形になって、魚が呼吸困難になってしまうので、「やっかい藻」などという、ヒドイ言葉で呼ばれてしまったりもしている。海のめぐみをおいしくいただくものにするか、処理に困る廃棄物にするのか、すべてヒトの行ないにかかっていると言っても過言ではない。

【材料】アーサ(アオサ)、醤油、砂糖、みりん、サラダオイル(なくても可)

【作り方】
❶浜でアーサを拾う。宮古島では漁業権問題にもなっているらしいので、できれば沖縄の人と仲良くなって、いつも採集しているフィールドに連れて行ってもらうのがいいだろう。
❷採集容器はザルを使うと水気が切れるのでオススメ。砂を洗う時は海水で。真水で洗うと塩気が抜けてペチャペチャになってしまう。面倒でも採集する際に洗っておくのがいいだろう。
❸水気をしっかり切ってから、大きめのフライパンで水分を飛ばしながら炒める。テフロン加工が施されているものならそのままでもいいが、鉄製のフライパンの場合はサラダオイルを引いてから炒めた方がいい。
❹醤油を加えて弱火で煮詰める。アーサのきれいな緑色が残せないのが残念!
❺砂糖とみりんを加えてさらに煮詰める。砂糖の量はお好みで。砂糖を加えてからは一気に焦げ付きやすくなるので、目を離さず、頻繁にかき混ぜること。ショウガ汁や一味唐辛子などを加えてもいいだろう。
❻保存ビンに入れて保管する。

今回は直径20cmほどのボウル一杯分のアーサを用意したが、それでできる佃煮はシェラカップ2杯程度。佃煮は煮詰めて作るので、一度になかなか大量には作れない。

沖縄の1~3月、中潮~大潮の日の干潮時に浜へ行き、アーサを拾う。根に近いところには砂がついているので、海水でよく洗って砂を落としておくことが肝心。

水気を切ったアーサを炒めて水分を飛ばしてから、醤油と砂糖を加えて煮詰めていく。強火で短時間で仕上げたいのも分かるが、焦げ付きやすいのでオススメしない。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。