【vol.69】酷道493号

ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

室戸岬をショートカット
トトロなトイレがある酷道
高知県高知市〜高知県安芸郡東洋町

国道493号は、高知市から高知県安芸郡東洋町までを結ぶ総延長112キロ余りの一般国道だ。高知市から長らく、海沿いを走る国道55号との重複区間が続く。奈半利町まで達すると、ようやく国道55号と別れて493号は山へと向かう。

他方、国道55号は海沿いをそのまま進み、室戸岬の出っ張り部分をトレースする。それに対して、国道493号は室戸岬をショートカットする形だ。

国道55号を奈半利町で左折し、ようやく493号の単独区間に入るが、まだ酷道にはならない。この先約5キロ間は、地域高規格道・北川奈半利道路として整備されている。終点の柏木ICより先に、酷道区間が待ち構えている。

北川奈半利道路が終わると、いきなりセンターラインが消えた。嬉しい展開の早さだ。所々で北川奈半利道路に接続する北川道路の建設工事が行われている。今残っている酷道区間も、いずれは高規格道路となり、失われてしまう可能性がある。酷道は一期一会。会いたいと思った時に会いに行かないと、二度と会えなくなるかもしれない。

しばらくは奈半利川に沿い、センターラインの無い酷道区間が続く。このあたりには、かつて魚梁瀬杉を運搬するために開業した魚梁瀬森林鉄道が走っていた。1964年に廃止されたが、国道493号の一部は、その廃線跡の路盤の上を走っている。森林鉄道の痕跡は少ないが、緩やかなカーブに面影を感じる。酷道を外れた場所には、廃線跡の痕跡が色濃く残る場所もある。本稿では紹介しないが、興味がある方は近隣の伊尾木森林鉄道の廃線跡と併せて探索すると、より楽しめるだろう。

酷道は部分的に改良されており、高規格道路になったかと思えば、すぐにまた酷道に戻った。真新しい立派なトンネルを抜けると、急激に道が細くなったりする。改良工事中の酷道ではよくある光景だが、慣れていないとビックリするだろう。

この先に立派な橋が架かるようで〝ズドーンと橋ができるぜよ〟と書かれた看板が目を引く。

その先、さらに道幅が狭くなり、路面の状態も酷くなった。本格的な酷道区間をワクワクしながら走っていると、この酷道最大の難所・四郎ヶ野峠に到達した。峠に登山道の入り口があるためか、休憩所とトイレも設置されている。人家が全くない場所なので、トイレがあるのは嬉しい。しかし、トイレの屋根の上には、草だけではなく、やや太めの樹木まで生えていた。まるでトトロの世界に出てきそうなトイレだ。

峠を下り、さらに10分ほど走ると国道55号と再び合流し、国道493号は終点となる。室戸岬をショートカットしたが、体感としてショートカットしたとはまるで思えなかった。映えるトイレを見る目的だけでも、ぜひこの酷道を訪ねてみてほしい。

軽自動車のソニカでこの道幅。

狭隘区間にあると嬉しい国道標識。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/