【vol.66】第34回 伝統保存食入門

バジルペースト

たとえプランター菜園であっても野菜やハーブはなる時には一気に大量になる。一度に食べきれないほど採れたものを取っておけるように加工するのが保存食だ。今回はまさにその必要性に迫られたのだが、おかげで美味しいバジリコスパゲッティが簡単に作れるようになった。

イタリアンには必須の香り

うちは妻が植物好きで庭には様々な植物たちが植えられているのだが、実はその半分近くが食用だ。昨年は虫にやられて大した収穫ができなかったのだが、今年はシシトウやゴーヤーと同じプランターに植えたおかけでバジルが豊作だった(苦いものや辛いものと一緒に植えると虫が付きにくいという農法で、それらをパートナープランツと言うらしい)。

野菜は概してそうなのだが、なるときには一気になる。ある時に収穫して、ない時のために加工をするというのが保存食の考え方なのだが、今回はまさしくその必要性に迫られたというわけだ。

バジル(バジリコ)はピッツァ・マルゲリータやカプレーゼ(トマトとモッツァレラチーズのスライスとバジルの前菜)などイタリア料理には欠かせないハーブで、これがあるとないとでは全く違う料理になると言ってもいいほどの個性を持っていて、僕は大好きだ。

このバジルを大量に必要とするのが今回のバジルペーストで、特に松の実とパルミジャーノチーズが入った濃厚なタイプのバジルペーストはジェノバの名産品で「ジェノバペースト(ペストジェノベーゼ)」と呼ばれている。日本でもビン入りが市販されているが、余分な混ぜ物なしできちんと作られたものは、手の出しにくい値段になっている。バジル好きなら是非自分で作ってみることをオススメしたい。

【材料(180~200ml入りのビン1個分程度)】
バジルの生の葉30~40枚、ニンニク小2~3片、松の実大さじ3~4、パルミジャーノ粉チーズ大さじ3、塩小さじ1/2~1、エクストラバージンオリーブオイル大さじ4~5

【作り方】
❶バジルの葉は洗って水気をきちんと拭き取っておく。
❷ニンニクと松の実、粉チーズをブレンダー(もしくはフードプロセッサー)に入れ、大さじ1のオリーブオイルを少しずつ足しながら撹拌する。
❸①と残りのオリーブオイルを少しずつ足しながら撹拌する。葉が浮き上がってくるので時々ブレンダーの蓋を開けて上から押さえる。くれぐれもスイッチを切ってから押さえること。ブレンダーの刃が回転しているうちに箸などを入れると木片入りの、手を入れると肉片入りのバジルペーストが出来上がることになる。
❹いい感じのペーストになったら塩を加えて撹拌し、好みの塩加減にする。舐めてみて少し塩辛いくらいがパジリコスパゲッティなどにはちょうどいいし、保存も効く。
❺煮沸消毒したビンに詰め、上にオリーブオイルを注いで密閉してから蓋をする。減圧密封のための湯煎はしないので空気遮断のためのオリーブオイルは入れたほうがいい。使いかけの時もなるべくこうしたほうがいい。
❻茹でたスパゲッティに絡めるだけ、鶏肉や魚のフライに添えるだけで極上の一品が出来上がる。松の実とチーズなしのシンプルなバジルペーストもいい。

写真では少ししかないがバジルの葉はもっとたくさん使う。30cmほどのボウル1杯分くらいの量が必要。サラダ用に売っているのを買うと、とんでもない値段になるので、やはり栽培するのがオススメ。

盛大にできたバジル。サラダに使うには若葉の柔らかいものが向いている。大きくなって多少硬くなってきたものには苦味が出てくるがバジルペーストにはちょうどいい。

撹拌途中のブレンダー内の様子。初段階なのでバジルの葉はまだ少ししか入っていない。これからバジルの葉とオリーブオイルを足しながら本格的に撹拌していく。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。