【vol.64】にわとりのいる暮らし No.43

女友達二人を連れてコフキ(ブンショウの猟師小屋)に泊まりに行った。サバイバル要素の強いコフキで、家主が不在なのは不安だが、鬼の居ぬ間の洗濯を目論んだ。ブンショウは「ちゃんとできるのかなァ?」と意地悪な笑みを浮かべている。

しょっぱなから、バス停を間違えて三時間に一本のバスを逃す。サーッと血の気が引いた。夏シーズンに入ってバス停が増えていたとはいえ、おしゃべりしているとひとりの時にはありえないミスが起きる。

山小屋に着くと、すぐに昼食の用意=かまどの火熾しにとりかかる。コフキでは沢の水を引いているので、茹でたての麺類がおいしい。とりあえず大鍋に水をいっぱい入れて文化かまどにのっけたのはいいが、なかなか火力があがらない。薪の量が足りないのか、積み方が悪いのか? 普段はファミレスの厨房で働くKさんが、必死に火を調整してくれ、結局一時間もかかってうどんを茹で上げた。一度安定した火を無駄にしたくなくて、あわてて夕飯の仕込みもしてしまう。遅い昼食にありついたときには、みんな煙にいぶされていた。

あっというまに夕方になり、庭にある五右衛門風呂を炊くことにする。慣れない主婦たちを哀れんで、文祥が五右衛門風呂の釜の下に薪をきっちり積み上げておいてくれた。着火するとすぐに燃え上がった炎を見て「ブンショウさん、すごい!」とYさんが感動している。もし本人がいたら、結局また、何からなにまでやってもらうことになり、自分の実力を知ることができなかっただろう。炊事とおしゃべりしかしなかったが、直火で作ったうどんもスパイスカレーもおいしくできて、なんともいえない充足感を味わった。

服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 富士山ではぐれ、ずっと車の横でしゃがんでいました。
「ヤマト」 ♀ 手入れされて、だいぶきれいになりました。
「サンちゃん(チャボ)」 ♀ 「キー丸(チャボ)」 ♀ 「シーシー(チャボ)」 ♀
メスのシーシーが、卵を産まなくなってしまい繁殖計画が頓挫しています。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ コフキで畑と果樹園を作っています。
「コユキ」 ♀ 夏野菜の生育が楽しみです。

「ショウタロウ」♂ 大学4年。就職が内定しました。
「ゲンジロウ」♂ スパイス料理を研究中です。
「シュウ」♀ 1500m、近いうちに5分切ります。

服部小雪

イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。