【vol.62】カミキリムシの幼虫をいただきま~す

今回のテーマ:カミキリムシの幼虫をいただきま~す

カミキリムシの幼虫は木を食べて成長する。種類も多く、それぞれで食べる木が違う。生きた木の中にいるものもいれば、朽ち木の中にいるものもいる。今回は朽ち木の中にいる幼虫をゲットする。

まだまだ寒い日が続いているが、そろそろアカガエルの産卵がはじまる。その後、トウキョウサンショウウオの産卵時期となり、関東の里では春先取りの生きものが動き出すソワソワする季節の到来だ。毎年同じ光景なのに、なぜ毎年見に行くのか、家族に呆れられるのも当たり前だ。まぁ自分が生きている間は、見られる生きものはすべて観察したいというだけのことだ。

今回は静岡県へカエルの産卵を確かめに出掛けたのだが、カエルの産卵は夜なので、昼間に林道をウロついてきた。いつぞやの台風の影響で路肩には所々に折れて放置された木が転がっていた。朽ち木を見るとなんだか割りたくなるのが虫好きの心情。割らないで通り過ぎずにはいられない。毎年河原に出かけては朽ち木の中で越冬している虫を引っ張り出して観察している。路肩に車を止めて早速朽ち木を選んだ。とは言ってもそこまで虫キチではないので、自分なりのルールがある。割る時にナタなどを使わずに、移植ゴテか足で割る。ナタを使うとムキになり、かなりひどい残骸になるからだ。俺は虫屋と違うぞとアピールしているのもある。やっていることは変わらないのにね、変なこだわりだ。

まずはそこそこ太く柔らかい朽ちた木を探す。足で踏みつけて崩れるようなぐらいが良い。割ってみて内部に幼虫の通り道と糞があればそれでいる、いないが判断できる。また、冬を成虫で寝て過ごす虫も出てくる。何が出るかわからないところがこの朽ち木割りの楽しいところでもあるのだ。最初に出てきたのはカミキリムシの幼虫。幼虫で名前を当てるのは難しいけれど、その木が何かわかればおおよそ種がわかってくる。カミキリムシによって木がなんとなく決まっているからだ。次に出てきたのは、コクワガタの成虫。幼虫も出てきた。木の中を食べて成長する虫にありがちなのは、成長がバラバラで幼虫もいれば成虫もいることだ。冬にコクワガタの成虫が出るのは当たり前なのだ。今まで何度も朽ち木割りをしているが、いろいろな生きものが出てきている。スズメバチの女王、アメンボ、サワガニ、トウキョウサンショウウオ、アカハライモリ、マムシなどなど、名前を聞いただけでちょっとやってみたくなるでしょ?

今回は、大小たくさん出てきたカミキリムシの幼虫を食べることにしよう。何度も食べているが、朽ち木の幼虫ははじめてだ。普通カミキリの幼虫は、木を倒した時や薪割りの時に生きた木から出る幼虫を、山仕事をしている人が食べていた。コナラで出てくるのは大抵シロスジカミキリで、生きている木から出るからか非常にうまい。今回私が引っ張り出している幼虫は朽ち木に入っている幼虫で、幼虫の大きさで判断するとおそらくウスバカミキリだ。

そんなに本気を出さなくても、疲れない程度に1時間。カミキリムシの幼虫が21匹、コクワガタの幼虫が8匹採れた。これを焚火台で焼いて食べる。カミキリムシの幼虫は山仕事をする人のおやつだ。ちなみに虫食ブームがあるようだが、注意したい点がある。虫は毒がない限りどんなものでも食べられるが、味見程度に留めることだ。

装備

寒い場所では防寒着を着用。グローブや軍手も忘れずに。本来ならナタなどの刃物が必要だが、私の場合は移植ゴテを使う。持ち帰り用にバケツを用意。

朽ち木を見ると割らずにはいられない!

冬の遊びの1つに朽ち木割りがある。朽ち木の中に隠れている生きものを探す遊びだ。場所によって生きものが違うので、楽しい。

林道沿いに落ちている、倒れている朽ち木を探す。また、河原でも探せる。山の持ち主がいれば断りを入れてからもらう。

落ちている朽ち木の硬さや虫の出た穴はないかなどをチェックする。ナタを使わないので硬い木は諦める。大きな穴があれば違う生きものも隠れている。

足で踏み潰して割れるくらいが虫を探しやすい。移植ゴテで軽く割ってみる。食痕が出てきたら丁寧に虫を探す。食痕とは、幼虫が木を食べて進んだ痕。糞で埋まっている。

でたぁ~!

カミキリの幼虫が出てきた。この木だと選んだ木から何か出てくると、どんな生きものでも嬉しい。この木はそんなに太くないのにカミキリの幼虫がたくさん出てきた。

ポイント

水分を多く含んでいるものは柔らかく手で割れる。木目に細かな糞が詰まった幼虫の道はコクワガタ。粗い木くずはカミキリムシ。食痕の太さで幼虫の大きさがわかる。

カミキリムシ幼虫の炙り焼き

 

1.木から出した幼虫を食べる分だけチョイスする。できるだけ大きいものを選んだ。コクワガタの幼虫も入っている。味を比べてみる。

2.焚火台に火を熾す。せっかくなので虫を探すために割った木屑などもいれて残骸を綺麗にした。木を割るとどうしても残骸が出て見栄えが悪くなる。

3.熾火ができる間にシノダケを用意して、先を尖らせて幼虫を刺し通す。うまく刺せると汁が出ないが、体液はどうしても出てしまう。

4.熾火ができたら、遠火でゆっくり焼いていく。全体にほんのり焦げ目がつくぐらいがちょうどいい。焦げないように注意する。

5.こんがりと綺麗に焼けた。半ナマも試したことがあるが数が食べられないのと、あのジュワ~感が好きじゃない。

美味!

美味しいが後に苦味が少し残った。はっきり言うと、生きた木に入ってるシロスジカミキリの方が美味い。コクワガタの幼虫はホコリ臭さく不味かった。

木から出てきた虫たち

コクワガタの幼虫

クヌギやコナラ、時にはサクラなども食べている。木の種類は様々のようだ。出てきた幼虫を飼育することもできる。

ウスバカミキリの幼虫

大型のカミキリムシで、食べごえアリ。今回このカミキリムシの幼虫が多く出てきた。おそらく終齢でこのあと蛹になる。これも飼育できる。

オオゴキブリ

木の隙間で集団越冬していた。山に棲むゴキブリで、家に出るゴキブリと違ってかなりスローな動きだ。マニアには人気。

コクワガタ

成虫が数匹出てきた。秋ぐらいに成虫になって、翌年の夏に飛び出る。真冬のクワガタ採りも楽しいものだ。

キマダラミヤマカミキリ

成虫が数匹出てきた。春に出てくるカミキリで朽ち木の中でよく見かける。幼虫を探したけど見つからなかった。

注意

甲殻類アレルギーの人は虫食をやめてください。虫のなかまは、甲殻類アレルギーの原因ともいわれているトロポミオシンというタンパク質が含まれているので同じ症状が出ます。喉の痛みが出たらやめましょう。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。