【vol.62】にわとりのいる暮らし No.41

生き物を飼っていると、自由と管理について考えさせられることが多い。ニワトリも犬も、開放するとのびのびとして幸せそうだ。しかし、野放しには天敵や怪我、近所迷惑などのリスクもつきまとう。双方の間でバランスを取りつつ、日々どうにかやっていく。面倒なことの積み重ねが、一緒に生きるということなのだろう。

ナツは、山と都会を行き来している犬だ。小蕗と呼んでいる集落にいる間は、自由に過ごしている。どこをどうほっつき歩いているのか、山から三~七時間ほど帰ってこないこともある。ナツが戻らないと、人間は、何かあったのではとハラハラしながら待つはめになる。そのおかげで、文祥は登山者の帰りを待つ家族の気持ちが少し分かった、と言った。

電車に乗って都会に帰ってくると、オヤブンは街の仕事へ。置いてけぼりになった犬は自由を失う代わりに、暖かい部屋でちやほやされ、とたんにペットらしさ(?)を取り戻して、ダメダメな犬になってゆく。

ナツは半野生だけあって、ノーマルな散歩を好まない。彼女は幼い頃から警戒心が強く、他の犬に出会うのが大の苦手である。散歩に誘ってみても、ナツが気乗りしなければあっさりことわられる。こうなると飼い主の面目丸つぶれだが、ナツの経験値を考えると「意志のある犬」になるのも無理はない。

庭(山の斜面)に放してやると、犬は用を足すついでに、鹿の皮を土の中からひきずり出し、皮を噛み砕いて遊んでいる。 

ここで事件勃発。なんとナツは抜け穴を見つけて隣家のA邸の庭に入り込み、芝生でゴロゴロしていた。挙げ句の果てに、庭をのぞいたAさんに吠えたらしい。ナツはオヤブンにこてんぱんに怒られ、リードにつながれてふて寝してしまった。

服部家の生き物
「チャボーず」 (サンちゃん♂、キー丸♂、シーシー♀の3羽) シーシーが春に卵を孵す予定。
「ナツ」 ♀ 半野生犬だけど甘いものが好き。
「ヤマト」 ♀ 今日も不気味な目つきで野鳥をジッと見ています。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 横浜の家の修復が後回しになっています。
「コユキ」 ♀ 今年は寒くて、春まで薪がもつか心配。

「ショウタロウ」♂ 大学は長い春休みに。
「ゲンジロウ」♂ アナーキーな二十歳。
「シュウ」♀ 今号の4コマ漫画、原作者。

服部小雪

イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。