【vol.61】エビをいただきま~す

今回のテーマ:エビをいただきま~す

郊外の多少流れのある川でガサガサをすると、小さなエビが網に入る。冬場は水草や水に生える植物の根などに集団でいる。エビの種類は地域で様々だがヌマエビの仲間だ。あまり見向きもれさないエビだが、今回はこのエビが主役。

温暖化? それとも歳のせい? あまり寒さが感じられない今年の年末。これも温暖化の影響なのか、きっと年間の平均を測ると例年よりはほんの少し暖かいんだろう。それでも冬だ。毎年この時期に遊ぶ田んぼの水路へ出かけた。東京からさっと行けて、いろんな生きものがいる埼玉県東松山市郊外。このフィールドには、かれこれ30年以上は通っている。これまで多少の環境整備で部分的に変わってきてはいるが、まだまだ残されている方だ。まあそれだけ相手にされない中途半端な場所なんだろうけど、周りを見ると順番が来るのも時間の問題だなと思う。

毎年、田んぼの水路で何をしているかというと、田んぼが終わり水路が閉鎖されて水の流れが止まると、残された生きものが包囲されて簡単に色々な生きものが見られるのだ。ただそれだけなのだが、ずっとやっているとこんな私でも環境がわかるようになる。見つかる生きものは魚類中心ではあるが、ざっと13種類。下手な川でガサガサするよりも色々見つけられる。ここでのライバルは、サギ類とタヌキ、アライグマ、イタチ。水が少なくなると毎日うろつく奴らにはかなわない。今回はいつもより早く、水がまだ残されているタイミングで覗きにきた。例年より暖かいのが、水草でわかる。コカナダモやカナダモがふさふさとしていて、まだ越冬の形ではなかった。

今回はここにたくさんいるヌカエビを捕まえて、年越しそばのかき揚げを作ることにした。エビ類は水草があれば水草にしがみついているので、水草の中を探るように網を入れれば捕まえられる。このエビはここ数年で全国でやたらと増えている。淡水で繁殖できるので海へ下る必要がないからだ。小さなエビではあるがたくさん採れば食べ応えはあるし、何より美味しい。

だがこのヌカエビが、ちょっとあやしいことに最近気がついた。見た目じゃ中々分からないが、そっくりな外来生物が入ってきている。ペットショップなどでよく見るカワリヌマエビ(シナヌマエビ)だ。見分けるとしたら目と目の間のツノのような突起の形状や、頬(?)にある棘などで、おじさんの目ではもうお手上げ。日本のヌマエビ属は見分けるのが難しく、最近ではもうあきらめてまとめて「ヌマエビ」と呼んでいる。

この日の水路ガサガサでめちゃくちゃ悔しかったことは、こんな水の無い水路でナマズを逃したこと。結構しつこく粘ったが、捕まえられなかった。家に戻ってからも悔しくてたまらない気持ちが収まらなかった。

今回の料理はこのヌマエビをカラッとかき揚げにするのがテーマだ。以前、愛知県で食べた天ぷらそばのサクラエビがめちゃくちゃカラッと揚がっていてすごく美味しかった。「揚げる」は今まで色々やっているのでだいたいわかっているが、あのサクラエビのサクサク感は今まで食べたことがなかった。そこで、エビは違うがあれくらいカラッと揚げて年越しそばに乗せたらと、ガサをしながら思いついたのだ。ヌマエビは飼育でも楽しいが、食べても美味しいエビだ。小さいから料理にはあまり向かないが、大量に捕まえることができるので、ぜひ一度、挑戦してみてほしい。サクサクでね。

装備

今回のエビは絶対に死なせてはいけないので電池式エアーポンプを使う。蓋ができるバケツにホースを通す穴をあけて、生かして持ち帰る。

多種多様な生きものが棲む田んぼの水路を探る

自宅から近い埼玉県郊外の田んぼの水路。水が干上がる前に生きものチェック。そこで大量に捕まえて料理したものとは……。

今年は、まだ暖かいから水草が青々としている。こんな場所にヌマエビは隠れている。だいぶ水がなくなってきているが、たくさんのヌマエビが隠れていた。

ヌマエビ類は数種類のそっくりさんがいて見分けるのが難しい。ここ最近になってやたらと増えているような気がするが何エビなのか気になるところ。

水路ガサ

本流に色々な魚がいる田んぼの水路では冬の時期、深い場所や隠れられるところにいるのは今年生まれの幼魚が多い。幼稚園といったところだ。色々な魚に会えるので楽しい。

コイ

産卵する場所は水草などだが、川に捨てられたゴミにも産卵する。水路では幼魚が残されて育つ。ヒゲがあるのでフナと見分けがつく。

フナ

春に田んぼの水路へ上がってきて産卵。生まれた稚魚は水路で大きくなる。水が無くならなければ水路に残ることもある。ヒゲはない。

メダカ

ここの水路では水が無くなると大量に死ぬ。ところが翌年にはたくさんのメダカが泳ぐ。これを何十年も続けてもいなくならない。

ドジョウ(マドジョウ)

冬には今年生まれの小さなものがよく採れるが水が無くなると泥に潜る。大きな個体は真っ先に泥の中に潜り込み翌春まで越冬する。

サクサクかき揚げを作る

 

1.捕まえてきたエビ類は、水を替えながら2日ほど泥抜きをして、お腹の中をきれいにさせる。ザルに揚げるエビを入れて、水を切る。上からキッチンペーパーで押さえて水分をなくす。

2.天ぷら粉を普段より水を少し多めにしてぴちゃぴちゃに作る。ここが普段の揚げ物と違うところ。目分量で作ったので量はなんともいえない。

3.揚げ物すくいでエビをすくい、溶いた天ぷら粉にかき揚げ1個分のエビを贅沢にたくさん入れる。

秘密兵器登場!

4.かき揚げリング! 以前サクサクのかき揚げを店で食べた際、この道具を使っていたので入手。これで揚げると厚みを持たすことができる。

5.油の温度は170度。用意したエビを一気に入れる。ゆるいぶん油はねがすごいので、やけどに要注意。この油はねのグツグツが空気の層をつくりサクサク感が出る。

6.エビが赤くグツグツが減ってきたら、かき揚げリングをそっと上げる。ちゃんと丸くくっついているか不安になるが成功だ。

7.厚みがあるので裏返して、裏面も揚げる。想像通りの丸いエビのかき揚げができた。これを今回は贅沢に2枚作った。

8.綺麗に揚がった! なんと1枚にエビが100匹以上。道具を使ったので当たり前だが、丸く綺麗に揚げることができた。

9.実はエビだけじゃなく、ドジョウやメダカ、オイカワなどの稚魚も混ざっている。エビのかき揚げではあるが、雑魚のかき揚げでもある。塩を振ってがぶっとひとかじり。激ウマ。これはいける。

完成!

そばの上に乗せて完成! そばと一緒に食べるもよし。かき揚げにかぶりつくもよし。とにかくうまく揚げられた。この方法で違うかき揚げにも挑戦したい。サクラエビではないがこれだけエビが入っていればどこを食べてもエビの味。ぜひ挑戦してみてください。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。