【vol.58】にわとりのいる暮らし No.37

メスのチャボ、シーシーの顔が、メンドリらしく赤くなってきた。しかし、まだ身体は小さくて卵を産みそうにない。シーシーは単独行動をとらず、常にオンドリたちと一緒にいる。二人の兄にくっついてまわる幼い妹のようだ。

シーシーはこわがりな性質を持つ反面、時にたくましい。私が土の中からコガネムシの幼虫やミミズを掘り出すと、オンドリを押しのけて食いつき、丸呑みにしてしまう。こちらとしては、はやく大きくなっておいしい卵を産んでもらいたいので、シーシーがいいものを独り占めにしているのをみると顔がほころぶ。

二羽のオンドリは、午前中は交互に鳴くが、チャボはそんなにうるさくは鳴かないので助かっている。オスは餌を見つけると自分では食べずに独特の鳴き声で餌のありかを伝える習性がある。ほんとうにいい餌なのかはあやしいのだが、ホッホというオスの声にメスがやってくるのを見ていると鶏たちも助け合って暮らしているのだなと思う。

彼らは一日中放し飼いにされており、夜は物置小屋に入るため、鶏小屋はほとんど使われていない。小屋の中に産卵室があるのだが、このままではシーシーはその辺の草むらで卵を産むのではないだろうか。以前飼っていたメンドリの中にも、どこかに姿をくらますのがいた。あやしいと感じ尾行したところ、いつのまにか暗い廃材置き場で卵を産みためていた。シーシーをこっそり尾行する日も近いような気がする。

服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 5歳になり山ではパワーアップしているが、しつけられていない面も。
「ヤマト」 ♀ 寂しがり屋で、猫語であれこれ人間に話しかけている。
「サンちゃん」 ♂ まっすぐに人間を見つめてくる鶏。
「キー丸」 ♂ サンちゃんより地位は低いが、よい声で鳴く。
「シーシー」 ♀ 期待のメンドリ。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 自分が老害になってはいないかと悩む日々です。
「コユキ」 ♀ 野菜の成長と収穫が楽しみ。

「ショウタロウ」♂ 大学の授業料が高くて、父泣かせの人。
「ゲンジロウ」♂ もうちょっと筋トレしなきゃなあ、と思う日々。
「シュウ」♀ 部活をやるためだけに高校に行っています。

服部小雪

はっとりこゆき◎イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。