【vol.56】ススキでほうきを作る

寒さが続き、たまに暖かい日が混ざり、その間隔がだんだん短くなり、暖かい日が続くようになるといよいよ春が来る。そのころ関東周辺ではアカガエルの産卵が始まる季節だ。まだ寒い季節ではあるが、確実に春へと進んでいる。暖かい日は外に出て、どれくらい春が進んでいるのか自然観察するのもいいものだ。新型コロナの影響でこもりがちかもしれないが、人に会わずに1人で外に出て遊ぶくらいはOKでしょう。

強い北風がなんども吹いた冬の後半、河原ではヨシやオギ・ススキなどが種を飛ばし、立ち枯れしている。まだかろうじてタネを残しているものもあるが、タネを飛ばしたススキを見つけたらほうきを作る絶好のチャンス。タネを取る手間がはぶけるからね。散歩ついでに寄り道した河原で、ススキの穂が気になりススキ狩り。これでほうき作りに挑戦だ。

河原に生えたススキをよく見るとススキにそっくになオギが生えている。多分気にしないと見た目でススキに見えて、知らない人たちは「ススキが綺麗ね~」とシーズンには鑑賞しているんだと思う。まぁ~、気にならない人はそれでもいい。私は小さいころおばあちゃんにオギはススキより白いから見た目でわかると教わっていた。その意味がいまいち理解できていなかったのだが、最近ようやく理解できた。それは自分でススキのほうきを作るようになってからだ。最初おばあちゃんはオギの穂に付く綿毛がススキよりも長く日に当たると光って白く見えると言っていた。比べるとわかりやすいが、河原を歩いてそれを判断していたおばあちゃんはさすがだなと思った。

ススキは1株からドバッと生えるが、オギは横1列に並ぶように生える。だいたいこれで判断ができる。穂の先のタネを取り除くとオギはやや黄色味がありススキはただの枯れた色だ。ほうきそのものはススキでもオギでもあまり大差ないが、教わった時はススキだったのでススキで今回も作ることにした。穂の部分がボリュームがあり、河原で多く見つかるのもオギなので特にススキにこだわらなくてもいいと思う。欲をかけばいくらでも手に入るのだが、まぁそこそこにして時間があれば河原で作るとよい。タネや葉を取り除く作業で意外とゴミが出るからだ。これを家でやるとママに殺されるので外で完結させることにした。

河原で作業していると川を散歩している人がたまに覗きに来る。「何作ってるんですか?」「ほうきです!」「へ~いいですね!」と流すように聞いていく人もいれば、ずっと見て作り方を覚えていく人もいる。みんなに真似をしてもらいたいから私はわざと「これ全部タダですから拾わないともったいないですよ~」と、言っている。何よりも採る・作る・得るは楽しいもので、お金には変えられない価値があるのだ。

ススキのほうきは束ねればすぐほうきとして使えるが、やはりちょっとは作った感が欲しい。編み込んでみたり柄をつけてみたりいろいろなタイプを作るとよいだろう。飾りにもなるし、使い道もあるので1度は挑戦してもらいたい野遊びだ。本気で作れば商品にもなる。いろいろなタイプのほうきを作り、実際に使いためしてもらいたい。意外と奥が深く、作り物が好きな人はハマりますよ。

装備

ススキといえば葉で手を切った経験がある人もいると思うがあれは地味に痛くいやなものだ。枯れた葉では切れにくい。用心のために軍手。切る道具に枝切りバサミを用意して採集する。裏技として素手でも節のすぐ下を折ると簡単に採ることができる。

ススキは株で生えるので大きな株なら何十本も採取することができる。ほっておけば無くなってしまうものなのでいくらでも取っていいのだ。春には根元から新しい芽を出す。採集は簡単だがちょっとコツがある。穂から1番最初の節の上で切り落とす。スルッと葉が取り除ける。

< クイズ >

河原で見つかる代表する穂のついた植物。この写真でススキはどれかわかるな? 3種類の植物の名前がわかるかな? 答えは右からオギ、ススキ、ヨシ。普段見てはいるけど気にしていないとわからないものだ。

ヨシ

アシとも呼ばれているが正式にはヨシ。イネ科の植物で茎で葦簀(よしず)を作る。穂先は柔らかでコシがないためほうきには向かない。

オギ

イネ科の植物でススキに似ていて生え方が地下茎でヨコバイに増えるので生え方を見れば区別はつく。河原や湿地など水辺に生える。

ススキ

オギとススキは良く似ていてほぼ同じに見えるが、生え方が違う。タネに写真のようにツンとした芒(のぎ)が出るのがススキ。オギの綿毛は白くタネを取り除いた穂はススキに比べると黄色。

ほうきの作り方

 

採集したススキの穂のタネと茎に貼り付いている葉を取り除く。その時に穂の形などを見ながら選定しておく。カットするほうきは曲がった穂先でもいいがカットしないほうきは真っ直ぐに伸びている穂先を選ぶ。

1.選定した穂先を並べて何本ほうきができるかおおよそ検討して、形なども想像しておく。

2.1本に使う穂の量。ほうきの大きさで変わる。仮止めとして束ねて紐で結ぶ。これだけでもすでにほうきに使える。

3.束ねたススキの先を広げてみて形を見る。穂の量が少なければこの時に足す。広げた感じで編んでいくイメージ。

4.最初の1本に編んでいく紐をひとつ結びで縛る。縛り終わったら紐を左右広げて次の穂を上に乗せる。

5.紐は写真のように穂を乗せたら穂を紐で交互に編む。穂に対しての紐の位置は自由だが横一線に、綺麗な線になるように編む。

6.紐の位置がずれてないかたまに確認しながら最後の1本まで編んでいく。編み方に変化をつけ工夫をしても、全ての穂に紐が編まれていればどんな編み方でもいい。

7.最後の1本を乗せたらちょっときつめに結ぶ。これを何本かの紐で繰り返す。

8.ほうきの形を作る。矢印の左右を内側に入れて仮で結んだ紐を解きちゃんと結び直す。この時形を整える。ほうきの先をカットすれば完成。

完成!

綺麗に整えて完成。編んだ紐の歪みが気になるが個性ということで。これをタイプ別でいくつか作る。材料を持ち帰って家で丁寧に作ると綺麗にできる。

バリエーション

使う場所によっていろいろなタイプを作ると楽しい。柄をつけたらイメージも変わってかっこいい。使い込むと穂が取れてくるので毎年作る楽しみもある。

日本野生生物研究所 奥山英治

主にテレビ番組やアウトドア雑誌や本などを中心に、自然遊びや生き物の監修などで活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに子供向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ刊)などがある。