【vol.52】本格的な梅雨前に棲家を用意する

緊急事態宣言解除後に梅雨入り。山にも夏がやってきた。今号の本誌企画で制作した小屋を作って終わりなんてもったいない。ここで新たな森暮らしを始める。この森は広く小川も流れる美しい森だ。ここで僕がどう生きられるか挑戦しよう。今回はその準備だ。

写真・文/荒井裕介

暮らしを作る

今回の特集(P19〜21)で担当した小屋づくり。せっかく作ったんだからとことんまで使い倒したい。だから僕はここに住もうと決めた。ここから新しいスタートになる。自宅の庭に建てるなら簡単な構造の小屋だが、柴を刈っただけの道しかないこの森に材料を運び、組み上げるのはかなり過酷な作業だった。もちろん僕の作業には締め切りがあって天気にも左右され、かなりの短期決戦だった。小屋として完成したがここから生活用のアレンジが必要になる。

でもここに住むには狭いので寝床を追加して、キッチンとテーブルを作ろうと考えている。ここに無いものと言えばインフラだ。まず生活に必要なものは水。簡易浄水器の濾過量では埒があかない。せっかく傾斜のある屋根を作ったのだから、その傾斜と天の恵も利用したい。小川も小屋のすぐそばを流れている。手始めに小川の水を水質検査に出した。次号が出る頃には結果も出ている。材料を用意したキッチンに水が流れ、作ったテーブルで森の恵を食べることはできるだろうか?

ここで生活しながら必要な文明を取り入れたり作り出したりする。できる限り自分の力だけで自分だけの生活アイテムを作り出したいのだ。野生のまま生きられたらカッコイイが文明を否定するつもりは毛頭無い。僕は自分の力とアイデアで暮らしを作ることを選んだ。

森に棲むなら道具も自作したい!
新たな居住空間を作り出す[その1]

人が暮らすのに必要なものは何か。それをしっかりと見つめ直すために山に棲む。自然から頂く喜びを噛みしめることができる小さなサイズの家。小さい小屋だが僕にとっては立派な家だ。インフラのない森では森のスタイルがある。ここを拠点に僕のインフラを作ろうと思う。

たった3畳の小屋にロフトを追加。雨の多い森では防腐剤や防虫効果の高い材料を選ぶ。明かりが灯った小屋は僕にとってはイーハトーブなのだ。営みの美しさを感じる瞬間だ。 

ツリーハウスでもお馴染みの檜の板。なぜ檜なのかというと、虫に強く水にも強いから。森で暮らすには欠かせな素材だと僕は感じる。薬品を使うのもいいが、こうした天然素材は魅力だ。

ーキャンドルランタン作りー

100円ショップのグラスジャー、アルミワイヤー、シロップスクープ、ネジでキャンドルランタンが作れる。アルミ針金は成型が楽でよく絞まるので使いやすい。シロップスクープのハンドルは短くカットして成型し直す。工具はワイヤーカッターとペンチドライバーがあればできる。

シロップスクープはキャンドルホルダーとして使用する。これがあればキャンドル交換が容易で、吊るしたままでも簡単に交換ができるようになる。

ー内装の準備をするー

壁付け用椅子金具と折りたたみテーブ脚用の金具、カフェ板。これでタイニーハウスでも簡単に収納ができるテーブルを作る。基本的に収納可能や兼用ができるアイテムを制作するのがタイニーハウスで生活するために必要なギミックになる。

ツリーハウスでも作ったキッチン。今回はシンクを角形にした。角形のメリットは洗い物をする際に楽なところだ。カフェ板を使用すると板のくり抜き作業が圧倒的に楽になる。分厚いが節の少ない部分を選べばサクサク切れる。

カフェ板とは最近カフェの床材として人気の高い杉板で写真のように縁がオス・メスになって綺麗にジョイントできるもの。これなら任意のサイズに組み合わせやすい。

鳥が運んできた恵

林道脇にここでは見慣れない植物があった。キイチゴだ。黄色く色付いたその身は甘く程よい酸味があって美味い。きっと鳥がフンを落としていった場所に芽が出ただろう。森にも夏が来たのだ。そして普段朝を知らせる鳥たちが山に恵みをもたらす使者だと改めて感じた。あらゆる命が自然を作り出しているのだ。

ブッシュクラフター 荒井裕介

普段から人に会うことが少ない僕のソーシャルディスタンスについて真剣に悩んだ。ワイルドライフクリエーターとしてバグアウトやサバイバルについて考えた。そして新たな挑戦と遊びを手に入れた。2児の父!