【vol.39】酷道418号

ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

日本三大酷道の1つ実質廃道区間をゆく「酷道418号」
岐阜県加茂郡八百津町~岐阜県恵那市笠置町川合

日本三大酷道に数えられている418号は、実質的に廃道であるにも関わらず国道に指定されていることから、マニアを魅了し続けている。

そんな酷道418号の廃道区間は、木曽川にべったりと沿って伸びており、すぐ下流には丸山ダムがある。この丸山ダムを嵩上げする計画が進行していて、工事が完成すれば酷道はダム湖の底へ沈んでしまう。今回、酷道418号の最新情報をアップデートするべく、久々に走ってみることにした。前夜、たまたま話をしていた友人が翌日休みだというので、一緒に行くことになった。ちなみに、その友人は酷道マニアではない。

昼前に現地に着くと、なんと、別の友人とばったり遭遇した。その友人とは以前、長野県の秘境・チロルの里で早朝に鉢合わせしたことがある。偶然とは恐ろしいものだ。一行3名となった我々は、まず車の選択を迫られた。小型セダンのプラッツか、オフロード車の王道・ランドクルーザーか。いずれも15年以上前の型式だ。悩んだ末、プラッツという選択をした。男3名が乗り込み、いざ酷道へ出発する。

しかし、あっけなく最初のゲートによって阻まれる。廃道区間に入ることすら叶わず、手前で止められて
しまった。予想はしていたので、一旦バイパスに戻って迂回路を選定する。この迂回路が、もはや酷い。小さな落石を跨いだだけで、床下から“ドカン”という嫌な音がする。落石を発見する度に車を降りて、撤去することにした。

本線に戻り、やっとのことで廃道区間に到着。これでようやくスタートラインに立てた。

廃道区間に入ると、道幅は急に狭くなり、ガードレールもない。道路の左側は山で、右側は木曽川だ。川といってもダム湖になっているため、水深は50メートルを超える。数十年前には舗装されていた道が、見事にガレてしまっている。

心霊スポットとして名高い二股トンネルを通過すると、一段と路面状態が酷くなった。落石に加えて木の枝が散乱している。小型のセダンは、木の枝でも簡単に引っかけてしまう。

車を降りる頻度が高くなり、ついに車に乗ることを諦めた。酷道マニアではない友人に運転を任せ、車の前を歩きながら障害物を除ける作戦に出た。

歩くこと1時間半、疲れよりも、落石を蹴りすぎて足が痛い。そうこうしていると、次のゲートが現れた。近くに迂回路があるので、またまた迂回する。この迂回路も、やはり酷い。落石・急こう配に加えて、竹が路上に倒れてきている。数々の障害物をかいくぐりながら走る。

最後に笠置ダムを見て、酷道の旅を締めくくった。今日は酷道を走行している時間より、迂回している時間のほうがはるかに長かった。

今日は酷道マニアではないプラッツの所有者が、ずっと運転していた。これだけ洗礼を受ければ、彼はきっと酷道が大好きになったに違いない。たぶん。

大きめの落石が現れた。これも手でどけるしかない。

路肩注意の標識も、錆びまくっている。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。徐々に仲間を増やしながら活動を続けている。
http://www.geocities.jp/teamkokudo/